資金繰りと融資・約6分
節税の前に、会社にお金を残そう
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
経費を増やしても、その分のお金が戻るわけではありません。手元資金を守る順序と、二つの共済の使いどころを考えます。
1. 税金が減っても、預金が増えるとは限りません
決算が近づいて利益が出そうになると、「何か買って経費にしよう」と考えがちです。ただ、税金が減る額と、支払う額は同じではありません。例えば不要な備品に十万円使えば、税負担が軽くなる場合でも、十万円全額が戻るわけではありません。
創業一年目は、入金の遅れや急な支出に備える余裕がまだ薄い時期です。節税策を見る前に、買わずに現金を残す場合と比べてください。赤字で当期の所得に対する税負担が生じない状況では、支出を増やしても当期の税金が減らないこともあります。
- その支出がなくても、今の仕事を続けられるか考えます。
- 支払額と、見込まれる税負担の減少額を分けて確認します。
- 支出後に残る預金で、次の支払いを賄えるか確認します。
税金だけでなく、支出後に残るお金で判断します。必要な支出かどうかを先に決め、その後で税務上の扱いを税理士に確認する順序にしましょう。
2. 最初に、使わないお金を取り分けます
毎月の帳簿がそろったら、税理士に今期の利益と納税額の見込みを聞きます。そのうえで、納税資金、近い将来の支払い、予定外の支出に備える資金を取り分けます。別口座へ移す方法でも、資金繰り表で区分する方法でも構いません。
ここでは、帳簿上の利益だけで判断しないことが大切です。売上代金が未入金なら、利益があっても預金は増えていません。借入金の元本返済は、通常、経費にならなくても現金が出ていきます。
- 納税見込みと、給与・家賃・外注費などの支払予定を確認します。
- 借入金返済や社会保険料など、忘れやすい出金も入れます。
- 大きな入金が遅れた場合に残る資金を見ます。
必要な予備資金は、固定費や入金までの期間によって違います。残った金額も全額使う前提にせず、事業上必要な投資を選びます。共済や保険への加入は、その後に検討する支出です。
3. 小規模企業共済は、社長個人の備えとして考えます
小規模企業共済は、加入資格を満たす小規模企業の役員などが、退職や廃業後の生活に備える制度です。会社の当面の運転資金を増やす制度ではありません。創業したばかりでも、対象となる役員か、業種や従業員数などの要件を確認して検討します。
掛金は、加入者個人の所得から控除される仕組みで、会社の経費にするものではありません。会社の節税と個人の節税を混ぜないようにしましょう。所得控除の効果も、社長個人の所得や税負担によって変わります。
- 個人の生活費と予備資金を確保してから、無理のない掛金を考えます。
- 加入資格と、受け取る事由による扱いの違いを確認します。
- 任意解約した場合の受取額や、受取時の税務を確認します。
任意解約の時期によっては、受取額が掛金総額を下回ります。近いうちに使う予定のお金を積み立てる先としては慎重に考えてください。会社の預金が多くても、社長個人の家計に余裕があるとは限りません。申込み前に、税理士と加入窓口で条件を確認します。
4. 経営セーフティ共済は、取引先の倒産リスクから考えます
経営セーフティ共済は、取引先の倒産による連鎖倒産などを防ぐための制度です。一定の条件のもとで共済金の貸付を受ける仕組みであり、売掛金の未回収分がそのまま補償される保険とは異なります。
加入には事業継続期間などの要件があるため、設立直後から加入できる前提で予定を立てないでください。自社の事業歴でいつ加入対象になるかを確認します。取引先への売掛金がどれほどあり、一社への依存が大きいかも検討材料です。
- 加入要件と、共済金の貸付対象となる事態を確認します。
- 掛金を払い続けても、日々の資金繰りに支障がないか見ます。
- 解約時の受取額と課税、再加入時の掛金の扱いを確認します。
法人の掛金には一定の要件のもとで損金算入の仕組みがありますが、解約手当金を受け取るときの課税も含めて考えます。解約して入り直せば同じ税務効果を得られる、とも限りません。税理士に入口と出口の両方を試算してもらいましょう。
5. 「節税になるから」だけで契約しません
決算直前に設備や保険を勧められても、急いで契約する必要はありません。支払えば全額がその期の経費になるとは限らず、資産として計上して複数年で費用にするものもあります。前払いした費用も、条件を確認せずに当期の経費へ入れないようにします。
やってはいけないのは、仕事と関係のない支出や、実態のない取引で経費を作ることです。社長の生活費を会社の経費に混ぜたり、日付や内容を変えた証憑で帳簿を合わせたりしないでください。
- 私的な旅行や買い物を、事業の支出として処理しません。
- 使う予定のない物を、税金を減らす目的だけで買いません。
- 保険や共済は、途中解約と資金拘束も確認して判断します。
候補があるなら、「払う額」「当期の税務効果」「将来受け取るときの課税」「途中でやめた場合」を税理士に聞きます。商品説明の節税額だけで決めず、本業に必要な資金が残るかまで確認しましょう。
6. 今日やること
- 税理士に今期の利益と納税額の見込みを聞き、納税資金を取り分けます。
- 検討中の支出を、事業に必要なものと節税目的のものに分けます。
- 共済を検討する場合は、加入要件・途中解約・受取時の税務を確認します。