資金繰りと融資・約6分
ファクタリング、契約前にいくら残るか計算
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
請求額と実際の入金額は違います。手数料を引いた手残りと、翌月に不足するお金を契約前に確認します。
1. 先に受け取る分、翌月の入金は減ります
ファクタリングを使うかは、今日の入金額と、翌月の支払いまで並べて決めます。目の前の不足が埋まっても、次の仕入れ代や家賃が払えなければ、再び資金を手当てする必要があるからです。
納品を終えて請求した代金を、支払期日より前に受け取るため、売掛債権を事業者に売る取引をファクタリングと呼びます。受け取れるのは、請求額から手数料などを差し引いた金額です。
創業直後は、まとまった注文が入った一方で、外注費だけ先に出ていくことがあります。そんなときも、見積もりを取る前に、対象の請求書について次を確認します。
- 納品や検収が済み、請求額が確定しているか
- 値引き、返品、支払日の変更について話が出ていないか
- 入金予定日と、自社の支払日がいつか
検収前や請求額に争いがある案件は、その状況を伝えて利用条件を確認します。請求書があるだけで、予定どおり売却できるとは限りません。
2. 手数料率より「口座に入る金額」を見る
比較するときは、請求額から引かれる費用をすべて円で並べます。広告に記載されている手数料率だけでは、今回の契約で受け取る金額は分かりません。
以下は計算用の仮定で、相場を示す数字ではありません。請求額100万円の債権を売り、手数料10万円、その他の契約費用2万円を差し引く条件なら、入金額は88万円です。
- 売却する請求額:100万円
- 手数料:10万円
- その他の費用:2万円
- 実際の入金額:100万円-10万円-2万円=88万円
この場合、前倒しで受け取るための費用は合計12万円です。手数料の表示が10%でも、今回の費用総額は請求額の12%になります。
見積書では、振込手数料、事務費用、債権譲渡の登記に伴う費用などが別にかかるか確認してください。後日返される留保金がある場合も、当日の支払いに使えるお金からは外します。
「差引入金額はいくらか」「追加で請求される費用はあるか」「何日の何時までに入金される予定か」を、メールや書面で受け取ります。支払日の当日ぎりぎりに着金する想定では、振込処理が間に合わないおそれがあります。
3. 今月を越えた後、22万円足りなくなる例
次に、差引入金額を資金繰り表へ入れます。その際、売却した請求書の入金を、翌月にもう一度足さないようにします。
先ほどの88万円を受け取る会社について、今月の手元資金が20万円、残りの支払いが60万円だとします。今月末には、20万円+88万円-60万円で48万円が残ります。当面の支払いは、この計算では賄えます。
ところが翌月に入る別の売上が30万円、支払いが100万円なら、48万円+30万円-100万円で22万円不足します。売却した請求書の100万円を、ここへ再び加えることはできません。
資金繰り表では、次の順に直します。
- 今月の入金欄に、差引入金額88万円を入れます。
- 翌月の入金欄から、売却対象の100万円を外します。
- 翌月末までの給与、外注費、家賃、税金などを入れ直します。
取引先からいったん自社へ代金が入り、その後ファクタリング会社へ送金する契約もあります。その場合は入金と送金を両方記載し、自社で使える残高から分けて管理します。
月末残高がプラスでも、月の途中で支払いが先に来ることがあります。残高が薄い週は日付ごとに並べ、最もお金が少なくなる日の残高まで確認してください。
4. 取引先への連絡と、未払い時の負担を確認
金額が合っていても、契約条件を読み終えるまでは署名を待ちます。取引先へ誰が連絡するか、代金が遅れたときに誰が負担するかで、その後の対応が変わります。
自社と事業者で契約する方式を「2社間」、取引先も関与する方式を「3社間」と呼ぶことがあります。ただし、その呼び名だけで通知の有無や負担を判断せず、実際の条文を確認します。
- 取引先への通知や承諾が必要になる条件は何か
- 代金の回収先と、その後の送金期限はどう定められているか
- 未払いや入金遅延が起きた場合、自社にどんな支払い義務があるか
- 買戻し、保証、損害賠償、解約費用の条件は何か
原則として、売掛先の未払いを理由とする買戻義務がない契約(ノンリコース)であることを確認してください。 売掛先が払わないときに自社が買い戻す条件(償還請求権)がある取引は、実質的な融資とみなされる可能性があります。貸金業登録のない業者がこうした融資を行う場合、違法な闇金である可能性が極めて高く、重大な損害につながるおそれがあります。
買戻しや立替払いを求める条項がある場合は、業者の説明だけで納得して署名せず、契約を止めて弁護士会などの公的な相談窓口に確認してください。「ノンリコース」と表示されていても、保証や損害賠償の名目で未払い分を負担させる内容になっていないか、条文で確認します。
請求書、見積書、契約書案をまとめ、費用と売掛金の会計処理は税理士に確認します。法的な負担を判断できない条項は、法律相談で意味を確認してから契約を決めます。
5. 毎月使う前提なら、入出金の条件を直す
一度だけ入金が遅れる場合と、毎月支払いが先に来る場合では、必要な手当てが違います。後者で利用を繰り返すと、そのたびに費用がかかり、本業に残るお金が減ります。
今回の利用で何日分の不足を埋めるのか、その間に何を変えるのかを書き出してください。「次の売上が増えるはず」という見込みだけで、翌月の不足を埋めないようにします。
- 顧客に、着手金や分割請求を相談します。
- 仕入れ先に、支払期日の調整を相談します。
- 金融機関に、資金不足の理由と必要時期を示して融資を相談します。
融資の可否は金融機関が判断するため、実行が決まっていない金額は、確定した入金と分けておきます。
今回の費用を払っても、翌月の支払いが回るかを最後の判断材料にします。不足が残るなら、その金額と対応期限まで決めてから、契約に進むかを考えます。
6. 今日やること
見積もりを依頼する前に、対象の請求書と翌月までの支払予定を手元へ集めます。次の作業を済ませ、急いでいるときも手残りを数字で判断してください。
- 対象の請求額から、手数料とその他の費用を引き、差引入金額を書きます。
- 元の入金予定を資金繰り表から外し、翌月までの最低残高と不足額を計算します。
- 契約書案で通知、回収の条件と、売掛先の未払いによる買戻義務がないこと(ノンリコース)を確認します。不明点は契約先へ書面で質問し、未払い分の負担を求める条項があれば、署名せず法律相談で確認します。