資金繰りと融資・約6分
事業の保険、最初に何を補償する?
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
事故のあとに払うお金を洗い出すと、先に備える補償が見えてきます。同じ条件で見積もりを取り、対象外の事故まで確認します。
1. 保険を探す前に、事故で出ていくお金を書く
事業の保険は、事故が起きたときに会社のお金で払いきれない損失から検討します。登記後、まだ契約していなければ、最初の納品や訪問、店舗の営業開始に合わせて確認を進めてください。すでに営業している会社は、今週の予定に保険を見直す時間を入れます。
商品名から調べ始めると、補償の違いを追うだけで時間が過ぎます。先に、普段の仕事を「どこで、誰に、何をするか」で書き出しましょう。お客さんの事務所で作業するのか、商品を発送するのか、データを預かるのかで、想定する事故は変わります。
事故のあとに出ていくお金は、次の項目で洗い出します。
- 相手のけがや物の破損について、賠償を求められた場合のお金
- 自社の設備や商品を直したり、買い直したりするお金
- 営業できない間も続く支払いと、再開のために追加で払うお金
自分の持ち物の損失だけでなく、相手への賠償と休業中の支払いも数えるのが出発点です。パソコンを買い直す費用は払えても、事故対応で仕事が止まれば、次の家賃や外注費が苦しくなるかもしれません。
2. 最初の補償は、仕事中の事故から絞る
洗い出した事故のうち、手元資金で負担すると通常の支払いが止まりそうなものを先に相談します。少額の修理まで広く補償するかは、そのあとで考えます。
たとえば、訪問先で作業する会社なら、相手の備品を壊す事故が候補です。ただし、机の上の物を落とした場合と、修理のために預かった物を壊した場合で、補償の扱いが異なる商品もあります。「他人の物を壊したら出る」と理解したまま契約すると、実際の仕事に合わないおそれがあります。
形のある物を扱わない事業でも検討は必要です。設定ミスで取引先の業務を止めた、納品データの不備で損害が生じた、といった事故は、けがや物の破損を伴う事故とは別に確認します。
見積もりを頼む際は、業種名に加えて作業内容を伝えてください。
- 店舗や訪問サービスなら、来客の転倒や作業中の破損を伝えます。
- 製造・販売なら、納めた商品が原因となる事故を伝えます。
- 制作・IT業務なら、納品物の不備や情報漏えいによる損害を伝えます。
取引先から保険加入を求められている場合は、契約書の該当箇所も用意します。指定された補償額を満たすだけで足りるか、自社の作業まで対象になるかを一緒に確認しましょう。
3. 「いくら必要か」は、事故後の復旧までの支払いを想定して考える
必要な金額を考えるときは、事故後の動きを順番に追います。店舗の設備が使えなくなったら、修理の前に片づけが必要か、代替機を借りるか、別の場所で営業するか。復旧までの段取りが見えると、設備代以外の支出も拾えます。
買い直す費用は、帳簿に載っている金額だけで判断しないでください。今と同じ仕事を再開するための価格を、仕入れ先や修理業者に確認します。保険側がどの基準で損害額を算定するかも、見積もり時の確認事項です。
休業については、売上全額をそのまま必要額にしません。営業を止めると減る仕入れや配送費がある一方、家賃や借入返済など、続く支払いもあります。
- 修理・買い直しに必要な金額と、復旧までの期間を調べます。
- 休業中も出ていく支払いと、再開に伴う追加費用を並べます。
- 入金予定と預金残高から、会社で負担できる額を見積もります。
ここで計算した資金不足と、保険から支払われる額は一致するとは限りません。借入返済なども資金繰り上は数えますが、その支払い自体が補償対象になるとは限らないためです。
賠償額は、相手の被害によって変わり、自社だけでは見積もりにくい部分です。想定する事故と取引先の規模を伝え、補償の上限を変えた見積もりを依頼します。保険金額は「これなら払える保険料」だけで決めず、事故後に不足するお金と照らします。
4. 見積もりは、保険料以外の条件をそろえる
相談前に、事業内容、売上見込み、働く人数、所在地、設備や在庫、既存の保険を一枚にまとめます。実績が少ない設立直後なら、見込みであることを明記し、変更があった場合の連絡方法も聞いておきます。
賃貸契約に伴う保険や、加入団体の制度で、すでに一部の補償が付いている場合もあります。契約書や証券を手元に置くと、重なりを確認しやすくなります。
比較先には同じ資料を渡し、次の条件を書面で回答してもらいましょう。
- 補償する事故と、支払われない主なケース
- 一事故あたりの上限と、保険期間全体の上限
- 事故の際に自社で負担する金額
- 休業補償が始まる条件と、対象となる期間
- 補償の開始日と、年額・分割払いの総支払額
事故時に自社で負担する金額は「免責金額」と呼ばれます。保険料が低くても、この負担額が大きければ、小さな会社には使いにくい契約かもしれません。
説明を聞く際は、「この作業中に、この事故が起きたら対象ですか」と具体的に聞きます。回答に条件が付いたら、見積書や説明資料のどこに書かれているかまで確認してください。
5. 契約後は、事故時の連絡先をすぐ出せる場所へ
契約したら、証券番号、事故受付の連絡先、担当窓口を一か所に保存します。事故の場では、人の安全確保や被害の拡大防止を優先し、状況を記録して保険会社へ連絡します。相手への支払いを約束したり、示談を進めたりする前の連絡手順も聞いておきましょう。
仕事が増えると、加入時に伝えた事業内容から外れる場合があります。新サービスを始める打ち合わせの項目に、保険の確認を加えてください。
- 新しい商品やサービスを扱う前に、補償対象か確認します。
- 店舗や設備を増やす前に、契約内容の変更を相談します。
- 更新案内が届いたら、売上や在庫、作業内容の変化を伝えます。
6. 今日やること
まずは普段の仕事で起こりそうな事故を一つ選び、支払いがどこまで続くかを書いてください。そのメモを見積もり依頼に使います。
- 作業中の事故、持ち物の損害、休業で必要になるお金を書き出します。
- 賃貸契約書と既存の保険証券を集め、加入済みの補償を確認します。
- 事業内容と事故の想定を添えて、同じ条件の見積もりを依頼します。