資金繰りと融資・約6分
大口注文、仕入れ代を先に払えますか?
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
大口注文は、利益が出ても入金前に仕入れ代が足りなくなる場合があります。受注前に支払日と入金日を並べ、資金と条件を整える順番を確認します。
1. 返事をする前に、先に出るお金を書き出す
大口注文を受ける際は、仕入れ代を払ってから代金を回収するまでのお金を確かめてから返事をします。創業したばかりだと、普段より大きな注文を逃したくないものです。ただ、売上が立つ日と口座にお金が入る日は違います。利益が出る見積もりでも、途中の支払いができなければ納品にたどり着けません。
注文の相談を受けたら、仕入先への発注をいったん待ち、その案件だけで先に払う費用を書き出します。商品の代金に加え、外注費や運送費も対象です。会計上の利益を計算する表とは用途が違うので、実際に支払う税込額を使います。
- 商品・材料の仕入れ代を確認します。
- 加工・梱包・配送に払う費用を確認します。
- 着手金や予約金など、納品前の支払いを確認します。
見積もりが届いていない費用は、空欄にせず「未確認」と残します。先方には「仕入れと支払い条件を確認し、受注可否をご連絡します」と伝え、回答する日を決めておきます。
2. 「月末払い」は何月の何日ですか?
次に、得意先から入るお金と、仕入先へ払うお金を日付順に並べます。「納品後に入金」「翌月払い」というメモでは、何日間立て替えるか分かりません。得意先と仕入先の両方に、今回の注文に適用される条件を確認します。
特に気をつけたいのが、納品した商品を相手が確認する「検収」です。検収が済んだ月を基準に支払う契約では、納品日だけで入金日を決められません。請求書の提出期限を過ぎると支払いが翌月に回る運用がないかも聞きます。
- 仕入先には、前金の割合と残額の支払日を聞きます。
- 得意先には、検収の予定日と支払日を聞きます。
- 得意先には、請求書の提出期限と送付先を聞きます。
確認結果はメールや見積書などに残します。電話で決めた条件も、通話後に文面で送り、認識が合っているか返事をもらいます。入金日が未確認のまま、仕入れの支払日だけを確定させないようにします。
3. 口座残高の全額を仕入れに使わない
日付がそろったら、今の預金残高から、支払いのたびにいくら減るかを追います。得意先から代金が入る日まで、今回の案件以外の出入りも含めて計算してください。普段の経費を別扱いにすると、仕入れはできても、その後の家賃や給与が払えなくなります。
この確認では、毎月の資金繰り表から、今回の支払いと重なる部分を取り出すと進めやすくなります。同じ支出を二重に引かないよう、仕入れ代を既存の表に計上済みかも確かめます。
- 家賃、給与、役員報酬の支払日を入れます。
- 税金、社会保険料、借入返済の予定を入れます。
- 既存案件の仕入れ代と、確認済みの入金予定を入れます。
見るのは、代金回収後の残高よりも回収までに残高が最も少なくなる日の金額です。見込みの商談や、まだ申請していない融資は入金予定に足しません。
さらに、検収の遅れや納品のやり直しで入金が後ろにずれた場合も計算します。その間に来る通常の支払いを賄えるかを確かめ、残しておく金額を決めます。残高が一度もマイナスにならない計算でも、追加の送料さえ払えない状態なら、条件の調整が必要です。
4. 足りないときは、まず前金と分納を相談する
不足が見えたら、受注を確定する前に取引条件を相談します。得意先には一部前払い、仕入先には支払いの分割や支払時期の変更を打診します。どちらか一方に頼るより、両側で少しずつ条件を整えるほうが話を進めやすい場合もあります。
前金をお願いするときは、「資金が足りないので」だけで終わらせず、専用材料の確保や仕入先への前払いが発生することを伝えます。いくらを、いつまでに入金してほしいかを示し、キャンセル時の扱いも併せて決めます。
- 得意先に、着手前の一部入金を相談します。
- 得意先に、分納した分から請求・回収できるか相談します。
- 仕入先に、分割納品と分割払いが可能か相談します。
分納しても、代金が全量納品後の一括払いなら、回収は早まりません。保管費や配送費が増える場合もあるため、変更後の費用と日付でもう一度計算します。
相手が前払いに応じるという口約束だけで、取り消せない発注を進めるのは避けます。前金を仕入れに充てる条件なら、入金を確認してから発注する段取りにします。
5. 借入が必要なら、発注前に銀行へ持ち込む
条件を調整しても不足する場合は、取引銀行や日本政策金融公庫などへ早めに相談します。その際は、借りたい金額だけでなく、何の支払いに使い、いつの売上入金で返す予定なのかを説明します。手元で作った日付順の計算が、そのまま相談の材料になります。
- 注文内容が分かる発注書や商談中の資料を用意します。
- 仕入見積書と、双方の支払条件を用意します。
- 不足額、不足する日、回収予定日を示す表を用意します。
融資の可否や条件は金融機関が判断します。相談や申込みだけで資金が入ると考えず、実行予定日も確認してください。先払いの期限に間に合う見通しが立たなければ、回答期限や納期の延長、受注数量の縮小を得意先に相談します。
資金の入金を待つ間に、取り消せない仕入れだけを先行させないことが、今回の判断の軸です。最後に、合意した数量・納期・支払条件を文面でそろえ、調達費用を含めても利益が残るかを確認して返事をします。
6. 今日やること
商談中の大口注文を一件選び、見積書と口座の入出金予定を開いてください。未確認の日付があれば、受注の返事より先に問い合わせます。
- 仕入れ代・外注費・配送費を、税込額と支払日で一枚にまとめます。
- 得意先に検収日・請求期限・入金日を確認し、回収までの最低残高を計算します。
- 不足するなら、前金・分納・支払条件の調整を相談し、残る不足額を金融機関に伝えます。