資金繰りと融資・約6分
自分のお金を会社に足すなら、貸付か増資か
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
社長のお金を会社に入れる方法は、返済予定から考えます。貸付と増資の違い、送金前に決めること、必要な手続きを整理します。
会社から返してもらう予定のお金は貸付、返済を前提にせず事業に置くお金は増資を候補にします。振込先は同じ会社口座でも、入れた後の扱いは違います。残高が足りないからと送金する前に、戻してほしい時期と会社の支払い予定を並べてください。
1. 返してほしい時期を先に決める
登記から数か月は、売上の入金より先に家賃や仕入れ代が出ていきます。その不足を社長個人の預金で補うことはありますが、「来月の入金まで貸す」のか、「当面の運転資金として置く」のかで選び方が変わります。
例えば、納品済みの代金が翌月に入る予定で、一時的に支払いが重なるなら貸付を検討しやすいでしょう。一方、受注の見通しがまだ立たず、毎月の赤字を補うお金なら、入金後すぐに返してもらえるとは限りません。
個人として返してほしい日と、会社が返せる日は別です。 今後の生活費や個人の支払いに使う予定のお金まで入れると、会社の資金不足が家計にも広がります。送金前に、次の内容をメモします。
- 会社で何の支払いに使うか
- いつまでに、いくら不足するか
- 何の入金を返済に充てる予定か
- 個人の預金をいくら残すか
返済の原資が「これから頑張って売る」だけなら、金額を小さくする、支出を延期するなども検討します。貸付か増資かを決めても、毎月お金が減る原因は残るためです。
2. 貸付なら、送金前に返済条件を残す
社長が会社にお金を貸すと、会社には返済する義務が生じます。帳簿では一般に「役員借入金」などで扱います。社長の個人口座から入ったお金を、売上として計上しないよう税理士にも用途を伝えてください。
自分一人の会社でも、記憶だけに頼ると後で残高が分からなくなります。送金する日までに、借りる会社と貸す個人の間で条件を書面に残します。お金の貸し借りを定める書面が、金銭消費貸借契約書です。
- 貸す金額と送金日
- 資金の使い道
- 返済期限と一括・分割の別
- 利息を付けるかどうかと、付ける場合の利率
- 返済条件を変更するときの手順
期限は、会社の入金予定と通常の支払いを見て決めます。見込みどおりに入金されなかった場合も想定し、生活費の支払い直前を返済期限にするような組み方は避けます。
利息の有無は、契約を作る段階で税理士に確認してください。これを受け取る場合は個人側の税務にも関わります。契約書に必要な印紙税(電子契約なら不要)や、会社の機関設計・取引条件に応じた社内承認の要否も、税理士や司法書士に確認します。
送金は履歴が残る「振込」で行い、契約書と入出金の記録を一緒に保管します。既に入金してしまった場合は、過去の日付で書類を作らず、実際の送金日と当初の合意内容を税理士に伝えて整理します。
3. 増資したお金は、気軽に引き出せない
増資は、返済を約束せず会社の事業資金として出資する方法です。会社の純資産を厚くするために選ぶことがありますが、貸付のように期限を決めて元本を返してもらう仕組みではありません。
増資したお金を、社長の判断だけで個人口座へ戻すことはできません。 その資金を回収するには、配当や資本の払戻しなど、それぞれに条件や手続き、税務上の扱いがあります。また、減資をすればそのまま返金できるという理解も避けてください。
株式会社で現金を払い込む増資なら、通常は株式を発行する条件を決め、必要な決議や引受け、払込みを経て、変更登記を行います。一人株主の会社でも書類は必要です。合同会社では手続きが異なるため、自社の会社形態を伝えて司法書士に相談します。
相談時には、次の情報をまとめて渡します。
- 増資したい金額と実施したい時期
- 現在の資本金と株主・出資者の構成
- お金を出す人と、それぞれの出資予定額
- 近く予定している融資申込みや許認可の手続き
他にも株主がいる場合は、持株比率や意思決定への影響も確認します。資本金の額によって税負担や制度の適用が変わる場合があるため、金額を決める前に税理士にも相談してください。
登記費用や依頼費用もかかります。明日の支払いに充てたいときは、増資の準備に必要な時間を確認し、貸付でつなぐ案も含めて検討します。
4. 入金後は、返済できる残高を毎月確かめる
貸付にすると、会社の預金と負債が増えます。増資なら、預金と純資産が増えます。どちらも入金によって売上や利益が増えるわけではありません。
融資の相談では、お金を入れた経緯や今後の返済予定を説明できるようにします。増資したから融資を受けられる、役員借入金なら問題にならない、と決めつけず、金融機関の判断を受けます。
貸したお金を返してもらう際は、口座残高だけで判断しないでください。売上が入った直後でも、その預金から仕入れ代、家賃、税金などを払う必要があります。毎月の帳簿がまとまるタイミングで、次を確認します。
- 会社から社長への借入残高
- 次の入金までに予定されている支払い
- 返済した後に会社へ残る預金
貸付元本の返済は、通常、会社の経費にはなりません。役員報酬や立替経費の精算と混ぜず、何の送金かを記録します。利息を一緒に払う場合も、元本と分けて税理士に伝えます。
予定通りの返済が難しくなれば、期限前に条件を見直して記録に残します。返済の免除や借入金の資本金への振替(DES)は、複雑な税務・会社法上の論点を伴い、自己判断で行うと大きな不利益を被るおそれがあります。実行前に税理士や司法書士に相談してください。帳簿の科目だけを変えて済ませないでください。
5. 今日やること
まだ振り込んでいなければ、使い道と返済予定を書き出してから方法を決めます。既に入れたお金は、入出金の履歴を集め、税理士に経緯を伝えて整理するところから始めてください。
- 会社の不足額と、自分の生活に残す預金額を書き出します。
- 返済を希望する日と、その原資になる会社の入金予定を並べます。
- 税理士へ貸付・増資の希望を伝え、増資を選ぶ場合は司法書士にも手順を確認します。