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資金繰りと融資・約6

設立前に払ったお金、会社からどう戻す?

公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論

個人で払った設立準備費用は、内容と証拠を整理して会社と精算します。返金の時期と税務上の費用処理を分け、二重計上を防ぎます。

設立準備で個人が立て替えたお金は、会社が負担する支出として整理したうえで、会社口座から返してもらえます。ただし、設立前に払ったものをまとめて「開業費」にすると、帳簿を直す手間が増えます。最初の月次処理に間に合うよう、何に使ったか、誰が払ったかを一覧にするところから始めます。

1. 設立前の支出を全部「開業費」にしない

会社を作るための支出と、できた会社が営業を始めるための支出は、税務上の扱いが異なります。

定款作成や設立登記など、会社の設立に必要だった支出は「創立費」の候補です。一方、会社設立後から営業開始までの間に、開業準備のため特別に支出した広告費などは「開業費」の候補になります。個人事業の開業準備と混同しやすいので、支払日だけで決めず、支出の目的と中身で分けます。

さらに、準備中に買った物でも、パソコンや販売用の商品は別の扱いです。事務所の敷金のように、後で返還される性質のお金も、そのまま費用にはしません。

  • 定款作成や設立登記の費用は、創立費として整理する候補にします。
  • 営業開始前の広告や準備の費用は、時期と用途を確認します。
  • パソコン、商品、敷金は、費用の一覧の中でも分けて記載します。
  • 私用の買い物や、以前の個人事業に属する支出は分けておきます。

設立前の打ち合わせ代や調査費など、境目が分かりにくい支出は、用途を書いて税理士に確認してください。科目を自分で決めきる必要はありません。

2. 最初の月次処理までに立替一覧を作る

領収書をまとめて渡すだけでは、会社の仕事に使ったのか、個人のお金で払ったのかが伝わりません。表計算ソフトなどで立替一覧を作り、証拠と対応させます。すでに営業を始めているなら、次に税理士へ資料を渡すタイミングで提出します。

記録する項目は、後から支出をたどれる内容に絞ります。

  • 支払日、支払先、金額
  • 買った物や依頼した仕事の内容
  • 設立や営業準備との関係
  • 支払った人と、現金・個人カードなどの支払方法
  • 領収書や請求書の保存先、会社からの返金状況

個人カードの利用明細だけで内容が分からない場合は、購入先の領収書や注文履歴も添えます。私的な買い物が同じ明細に含まれていれば、対象の行を示してください。メールやウェブで受け取った領収書・請求書は、データを残します。

設立前なので宛名が個人名になっている資料も、捨てずに保管します。宛名だけで結論を出さず、契約内容や用途を合わせて税理士に見てもらいます。領収書が見つからないものは再発行を依頼し、難しければ支払履歴と当時の記録を提出します。記録を自作しただけで税務上認められるとは限りません。

3. 会社の帳簿に載せてから個人口座へ返す

一覧ができたら、会社が負担する範囲と金額を確定します。税理士に依頼している場合は、「個人で支払済み、会社からは未精算」と明記して渡します。会社口座に支払履歴がない支出も、これで処理の対象に入ります。

会社側では、支出の内容に応じて創立費や資産などを計上し、同時に社長へ返すべき金額を記録します。この返済義務は「役員借入金」などの科目で管理します。実際に使う科目は、税理士とそろえてください。

実際の立替額を返す処理は、役員報酬の支払いとは別です。 給与に上乗せしたり、返金日にもう一度経費を計上したりすると、給与計算の誤りや経費の二重計上につながります。

  • 会社負担とする支出を帳簿に反映します。
  • 確定した精算額を会社口座から個人口座へ振り込みます。
  • 振込日と金額を立替一覧に記録します。
  • 帳簿に残る未精算額と一覧の残額を照合します。

会社が社長に返したことを後で追えるよう、振込記録と一覧を一緒に残します。会計ソフトが振込を自動で「経費」に分類した場合も、そのまま確定せず、返済の処理になっているか確認します。

4. 返金は、次の支払いに足りる範囲で進める

会社が負担する金額を整理できれば、初めての決算まで返金を待つ必要はありません。ただ、口座にお金があるからと全額を戻すと、仕入れ代や家賃の支払いが苦しくなる場合があります。

振り込む前に、直近の支払予定と入金予定を並べます。請求済みでも未入金のお金は、今使える残高には含めません。余裕が乏しければ一部だけ返し、残額を会社の帳簿に残して管理します。

  • 次の家賃、仕入れ、外注費、カード引落額を確認します。
  • 税金や社会保険料など、予定されている支払いを確認します。
  • 返金後の残高を見て、今回返す額を決めます。

毎月の資料提出時に残額を照合すると、返し忘れや二重返金に気づきやすくなります。資本金の払込みと立替精算は別に扱い、払込額から自分で差し引かないでください。個人で使っていたパソコンを会社へ移す場合も、購入代金をそのまま返す前に、譲渡としての扱いや金額を税理士に確認します。

5. 税金の費用処理と返金の時期は別に考える

会社からお金を戻してもらった日が、そのまま税務上の費用計上日になるわけではありません。

税務上の創立費・開業費に該当する支出には、税法上の「繰延資産」として、任意の額を償却する仕組みがあります(国税庁)。償却とは、帳簿に残した金額を費用へ移していく処理です。支出の分類や会計処理を踏まえ、どの期にいくら処理するかを税理士と決めます。

社長への返金が済んでも、税務上の費用処理が残る場合があります。 逆に、費用として処理しても、会社に返金する余裕がなければ未精算額は残ります。二つを同じ残高だと思わないようにしてください。

決算が近づいたら、次の内容をまとめて確認します。

  • 創立費・開業費として残っている額と、当期に償却する額
  • 資産や商品などに分けた支出の処理
  • 会社から社長へ返していない額
  • 消費税の申告が必要な場合の、設立前の支出や個人名義の請求書の扱い

赤字の期にまとめて費用にするか、翌期以降へ残すかは、今後の利益や欠損金の扱いによって判断が変わります。「全額返金したから全額経費」と決めず、決算前に相談します。

6. 今日やること

まずは個人カードと銀行の履歴を開き、設立準備に使った支出を拾います。分類に迷うものも一覧に入れ、確認待ちと書いて残してください。

  • 支払日・用途・金額・証拠の保存先を立替一覧にまとめます。
  • 税理士へ一覧を渡し、会社負担の範囲と帳簿の処理を確認します。
  • 会社の支払予定を見て、最初の返金日と返金額を決めます。

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