経営の数字・約6分
営業時間を延ばす前に、採算を計算しよう
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
営業時間を延ばして増えた売上から、追加費用を引いて採算を確かめます。短期間で試し、続ける条件と戻す日を先に決めましょう。
1. 延長するのは、お客さんが来そうな時間だけ
営業時間は、追加で残るお金と社長の負担を比べてから延ばしましょう。創業直後は「長く開けていれば売上が増える」と考えがちですが、閉店が遅くなると、片づけや発注、翌日の準備も後ろにずれます。売上が少し増えても、翌日の仕事に響けば続けにくくなります。
まず、直近の営業記録から、閉店間際の来店や営業時間外の問い合わせを拾ってください。「もう少し遅くまで開いていたら」という声には、希望する曜日と時間を聞きます。昼間のお客さんからの要望だけでは、夜に新しい来店があるかまでは分かりません。
- 閉店前に来たお客さんの人数と購入内容を調べる
- 時間外の問い合わせがあった曜日と時刻を残す
- 来店を断った理由が営業時間だったか確かめる
毎日延ばす必要はありません。反応のありそうな曜日と時間帯を一つ選べば、試す負担も記録の手間も抑えられます。予約制のサービスなら、希望の多い曜日に夕方の予約枠を増やす形でも試せます。
2. 夜の売上が、そのまま上乗せになる?
延長した時間に売れた分が、すべて会社全体の売上増になるとは限りません。普段は昼に来るお客さんが夜へ移っただけなら、営業時間は増えても一日の売上は変わらない場合があります。
延長枠の売上と、一日全体の売上をセットで記録します。 レジで時間帯別の集計が出せなければ、延長開始時と閉店時の売上累計を控え、その差を記録してください。予約の仕事では、予約を受けた時刻とサービスを提供した時刻を混同しないようにします。
比較する相手は、直前の同じ曜日です。ただし、雨の日と晴れの日、通常営業と販促をした日では条件が違います。創業して間もない会社は比較材料が少ないため、一日だけの結果で判断せず、天候や告知内容も添えましょう。
- 通常枠と延長枠それぞれの売上・購入件数
- 一日全体の売上と、比較する日の売上
- 天候、販促、近隣イベントなどの条件
新規か再来店かを把握できる範囲で記録すると、利用時間が移ったのか、新しい需要が増えたのかを考えやすくなります。
3. 増えた売上から、増えた費用を引く
試す前に、延長によって増える支出を一枚に書き出します。商品が売れれば仕入れや包装の費用が増え、カード決済なら手数料もかかります。閉店まで従業員に残ってもらう場合は、その時間に加えて、片づけや締め作業の時間も見込みます。
給与計算を単純な時給の掛け算で済ませてよいかは、勤務条件によります。残業や深夜の勤務が絡むなら、試す前に社会保険労務士へ確認してください。
- 売れた分に応じて増える仕入れ・材料・包装・決済手数料
- 延長枠と閉店作業にかかる人件費
- 追加の光熱費・交通費・清掃費・廃棄の費用
判断に使う式は、「一日全体で増えた売上-その売上に伴う原価や手数料-延長のために増えた運営費」です。延長枠で売れていても、昼の売上が減っていれば、その減少も含めて計算します。人件費などを複数の項目に重ねて入れないよう、費用の置き場所をそろえてください。
今の家賃のように、延長してもしなくても同額の支出は、今回の追加費用から外して考えます。ただし、これは営業時間を延ばす判断のための計算です。会社全体の採算を見るときには、家賃なども含めた費用を売上で賄えているか、別に確認します。
開店時間を変えるために照明や看板を買うなら、その一度きりの支出も分けて残します。日々の営業でお金が残っても、最初の支出を取り戻すまでには時間がかかります。
4. 社長の延長勤務も、ゼロ円にしない
一人で店に立つ場合、営業時間を延ばしても、その月の役員報酬はすぐには増やせません。それでも社長の時間は減ります。営業メールを返せない、見積もりが翌日にずれる、休日に経理をする。こうしたしわ寄せまで含めて続けられるかを見てください。
実際の支出とは別に、延長対応へ使った時間を記録しましょう。閉店時刻を過ぎてからの片づけや、延長営業に備えた仕込みも対象です。
- 延長のために社長が追加で働いた時間
- 後回しになった営業・事務・翌日の準備
- 翌日に出た遅刻、返信の遅れ、作業ミス
追加費用を引いた残額を、社長の追加時間で割ると、一時間の負担に対していくら残ったかが分かります。税務上の経費を計上するための数字とは分けて、続ける判断に使ってください。残額がプラスでも、通常営業時間の接客が荒くなるなら、時間帯や運営方法を見直す余地があります。
5. 終了日と、続ける条件を先に決める
試行は、たとえば特定の曜日だけを二週間延長する形から始めます。これは制度上の期間ではなく、記録を集めるための仮の設定です。来店が少ない業種では、同じ曜日をもう少し観察する必要もあります。
告知には「試験営業」と期間を載せ、終了後の営業時間をいつ案内するかも決めておきましょう。通常営業時間の表示は混乱しないよう、店頭と予約ページなどでそろえます。
続ける条件は、結果を見る前に書いておきます。 売上だけを条件にすると、忙しさや費用が増えてもやめ時を逃しやすくなります。
- 追加費用を引いた残額が、自社で決めた目標を満たす
- 社長や従業員の追加勤務が、決めた範囲に収まる
- 翌日の営業や通常のお客さんへの対応に支障が出ない
終了日に記録を見て、継続、曜日の絞り込み、元の時間への変更を決めます。売れなかった理由が告知不足なら、告知方法を変えて再度試す選択もあります。その場合も次の終了日を置き、赤字のまま延長を続けないようにしてください。
6. 今日やること
最初は、延長したい曜日を一つ選び、記録用の表を作るところまで進めましょう。営業中に細かく書けない項目は減らし、閉店後に埋められる形にします。
- 直近の同じ曜日の売上と、閉店間際の来店・問い合わせを確認する
- 延長で増える費用と社長の追加時間を記録する欄を作る
- 試す曜日・時間帯・終了日と、続ける条件を書き出す