経営の数字・約6分
初めての決算書、どこから読めばいい?
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
決算書は、儲け方・支払いの備え・資金の出どころから読みます。二つの表をつなぎ、税理士に聞くことを整理します。
1. 二つの表の役割をつかみます
決算書を受け取ったら、最初からすべての勘定科目を覚える必要はありません。まず、損益計算書と貸借対照表を並べます。損益計算書は一定期間の売上・費用・利益、貸借対照表は決算日時点の資産・負債・純資産を示します。
例えるなら、損益計算書はその期間の成績、貸借対照表は期末に持っているものと返す義務のあるものの一覧です。利益が出ていても、その売上がまだ入金されていなければ、貸借対照表には売掛金が残ります。
- 損益計算書では、対象期間を確認します。
- 貸借対照表では、いつ時点の残高かを確認します。
- 金額の単位が円か千円かを確認します。
創業初年度は、決算までの期間が一年より短い会社もあります。将来、翌期の売上と比べるときには期間の長さをそろえて考えます。決算前でも、税理士に月次の試算表をもらえば、同じ見方の練習ができます。
2. 視点一 本業で利益を残せているかを見ます
損益計算書は、売上高から下へ読みます。まず売上原価を引いた売上総利益、次に販売費及び一般管理費を引いた営業利益を見ます。売上総利益は商品やサービスから得る利益、営業利益は人件費や家賃なども含めた本業の利益を考える手掛かりです。
ただし、小さなサービス会社では、外注費などを原価に入れるか、販売費及び一般管理費に入れるかで見え方が変わります。粗利率を他社と比較する前に、自社でどの費用をどこへ入れているかを確認してください。
- 売上に対して原価がどれくらいかかっているかを見ます。
- 売上総利益で、人件費・家賃などを賄えているかを見ます。
- 営業利益と最終的な利益が違う理由を確認します。
補助金などの一時的な収益や、開業時だけの費用があると、その期の利益だけでは通常の稼ぐ力を判断しにくくなります。役員報酬を低く設定している場合も、社長の生活を支える報酬を払って事業が続くか、別に考える必要があります。
3. 視点二 近い支払いに使える資産があるかを見ます
貸借対照表の資産を見るときは、合計額だけで安心しないようにします。預金、売掛金、在庫、設備は、どれも資産でも現金になるまでの時間が違います。パソコンがあっても、そのまま家賃の支払いには使えません。
まず現金及び預金を確認し、次に売掛金の中身を見ます。予定どおり回収できるものか、長く未入金のものが混ざっていないかを確かめます。在庫のある会社は、売れる見込みの薄い商品が残っていないかも確認します。
- 預金残高が、通帳や銀行の明細と合っているかを見ます。
- 売掛金と在庫について、現金になる時期と見込みを確認します。
- 買掛金、未払金、税金など、近く払う負債を確認します。
流動資産と流動負債の比較も手掛かりになりますが、それだけでは支払日ごとの不足は分かりません。貸借対照表は一時点の写真です。決算日後の入出金予定を重ねて、「資産はあるが支払日に現金が足りない」という状態を見つけます。
4. 視点三 資金を何で支えているかを見ます
貸借対照表の負債と純資産を見ると、会社の資産をどのような資金で支えているかが分かります。負債には借入金や未払金などがあり、純資産には資本金や積み重ねた利益・損失などが反映されます。
資本金の金額と、今の預金残高は別です。資本金を設備や経費の支払いに使っても、資本金の表示が同じ金額だけ減るわけではありません。純資産も、そのまま引き出せる現金ではありません。
- 金融機関からの借入と、社長からの借入を分けて見ます。
- 借入残高だけでなく、今後の返済額と期限を確認します。
- 赤字によって純資産がどれくらい減ったかを確認します。
創業期に借入があることだけで、経営が悪いとは判断できません。調達した資金が何に使われ、返済を支える収益につながっているかを見ます。社長の立替や貸付が増え続けている場合は、個人資金で不足を埋めている状態として把握してください。
5. 税理士には、利益と預金の差を説明してもらいます
決算の説明を受けるときは、「今年は黒字ですか」で終わらせず、二つの表をつなぐ質問をします。利益が出たのに預金が減ったなら、売掛金の増加、設備購入、借入元本の返済などに理由があるかもしれません。
逆に、赤字でも借入によって預金が増えることがあります。預金の増減だけでも、利益だけでも、会社の状態を読み違えます。税理士に大きく動いた項目を示してもらうと、数字と実際の出来事がつながります。
- 「利益と預金の増減が違う主な理由は何ですか」と聞きます。
- 「今回限りの収益や費用を除くと、本業の収支はどう見えますか」と聞きます。
- 「回収や精算の確認が必要な残高はありますか」と聞きます。
あわせて、納税額と納付予定、次の期に注意する支出も確認します。創業費など、支出した時期と費用になる時期が違う項目も聞いておきましょう。説明後は、気になった数字を一つ選び、入金確認や固定費の見直しなど次の行動につなげます。
6. 今日やること
- 決算書か最新の試算表を開き、対象期間・決算日・金額の単位を確認します。
- 営業利益、預金、売掛金、借入金、純資産に印を付けます。
- 税理士に「利益と預金の増減が違う理由」を聞く時間を取ります。