経営の数字・約6分
会社のお金と自分のお金を分けるには?
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
社長が立て替えるお金と、会社から借りるお金は別物です。口座・カード・経費精算を整え、残高の混乱を防ぎます。
1. 会社の残高は、社長の自由なお金ではありません
一人で作った会社でも、会社と社長個人のお財布は別です。売上が入ったからといって生活費を自由に引き出すと、役員報酬なのか、立替分の返金なのか、会社からの借入なのかが分からなくなります。後から帳簿を整理するほど、確認にも時間がかかります。
登記後、まず整えたいのは、お金の入口と出口です。法人口座の開設待ちで個人口座を使った場合も、会社の取引を一覧にして、切り替える日を決めます。個人口座の明細を丸ごと会社の帳簿に取り込む運用は避けましょう。
- 売上の振込先と事業の支払元を、原則として法人口座にまとめます。
- 生活費は、決めた役員報酬を個人口座に振り込んで賄います。
- 会社と個人の間で送金するときは、目的を記録します。
口座を分けても、理由の分からない送金が残れば混乱は続きます。「誰のお金が、何のために動いたか」まで残すのが出発点です。
2. 役員貸付金と役員借入金を区別します
会社が社長に貸したお金が役員貸付金、社長が会社に貸したお金が役員借入金です。名前は似ていますが、お金の向きが逆です。社長が事業用の備品代を立て替えた場合は、一般に役員借入金や未払金などで処理します。使う勘定科目は税理士とそろえます。
一方、法人カードで私物を買い、会社が支払ったままになっている場合などは、社長への貸付として整理が必要になることがあります。役員貸付金が増えると、帳簿には資産があっても、会社の預金は減った状態になります。
- 会社から社長への送金に、説明のつかないものがないか確認します。
- 役員貸付金がある場合は、発生理由と返済予定を整理します。
- 私的な支出を、領収書があるという理由だけで経費にしません。
融資の相談でも、事業資金が個人へ流れた理由や回収見込みの説明を求められる場合があります。無利息の貸付には税務上の論点もあるため、残高を見つけたら税理士に確認してください。
3. 立替精算は、月に一度まとめます
創業直後は、交通費や少額の買い物を個人で払う場面が残ります。立替そのものをなくすより、精算の方法を固定するほうが続きます。最初は表計算シートでも十分です。購入のたびに証憑を保存し、月末に一覧を締め、翌月の決めた日に会社から返金します。
精算表には、日付・金額・支払先だけでなく、仕事との関係も書きます。「打合せ代」だけでは、数か月後に内容を思い出せません。相手先と目的が分かる記録にします。
- 領収書や請求書と、精算表の明細を対応させます。
- 返金は役員報酬と分けて振り込み、何月分の精算か残します。
- 電子メールなどで受け取った領収書は、電子データも保存します。
自宅の通信費など私用が混ざる支出は、全額を会社負担にする前に、事業で使う範囲と算定根拠を税理士に確認します。従業員を雇う前にこの型を作ると、そのまま社内ルールに展開しやすくなります。
4. 法人カードは、事業の支払いを集める道具です
法人カードを作ったら、会計ソフトやクラウドサービスなどの継続支払いから移します。最初から何枚も作るより、管理するカードを絞り、引落口座と利用明細を追える状態にします。法人カードで払ったものが、自動的に経費になるわけではありません。
カード明細だけでは購入内容や税務上必要な事項が足りない場合があります。明細の自動連携と、領収書・請求書の保存はセットで運用します。また、購入日と引落日が違うため、利用可能額を会社が使える現金と考えないようにします。
- 事業用サービスの支払いを法人カードに集めます。
- 私用に使わないルールを決め、誤使用は速やかに申告・精算します。
- 引落予定額を確認し、口座に必要な資金を残します。
従業員用カードを渡す場合は、利用目的・上限・証憑の提出期限も決めます。便利さより先に、誰が何を買ったか説明できる運用を整えましょう。
5. 月末に「会社と自分の貸し借り」を照合します
毎月の記帳が終わったら、税理士に役員貸付金・役員借入金などの残高を出してもらいます。まだ税理士が決まっていなければ、会社と個人の間の送金、立替、返金を一覧にしておきます。
確認するのは残高の大きさだけではありません。返金済みの立替が残っていないか、私的な支出が経費に混ざっていないかを見ます。社長が会社へ入れた資金も、出資と貸付では扱いが違うため、送金の目的を記録してください。
- 先月から増えた金額と、その理由を確認します。
- 精算済みの明細と、未精算の明細を分けます。
- 不明な残高は、決算まで待たずに税理士へ照会します。
会社の預金が少ないと、社長の立替で支払いをつなぎがちです。毎月立替が増えるなら、経費処理だけでなく、事業の資金不足として見直す必要があります。
6. 今日やること
- 法人口座と個人口座の直近の明細を見て、会社と個人の間の送金に理由を付けます。
- 未精算の立替を一つの表に集め、毎月の精算日を決めます。
- 税理士に役員貸付金・役員借入金の残高と内訳を確認します。