経営の数字・約6分
忙しいのに残らない仕事を見つけよう
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
案件ごとの作業時間と外注費を並べると、忙しさに埋もれた採算の差が見えてきます。次の受注で変える条件を決めましょう。
1. 売上の大きい案件ほど、お金が残るとは限りません
忙しいのにお金が残らないときは、案件ごとの作業時間と外注費を並べてください。売上だけでは、手元に残る金額も、そのために社長が何時間働いたかも分かりません。
創業して間もないうちは、受注できた仕事を懸命にこなす毎日です。見積もりでは半日で終わるつもりが、打ち合わせや修正を重ねて数日かかることもあります。請求額が同じでも、使った時間が増えれば、次の営業や納品に使える時間は減ります。
最初から全件を調べる必要はありません。直近で終えた仕事から、比べやすい案件を選びます。
- 普段よく受ける内容の案件
- 売上は大きかったのに、忙しさが続いた案件
- やり取りが少なく、予定どおり終わった案件
比べるのは売上の大きさと、社長の時間を使っていくら残ったかです。 この二つを分けて見ると、「もっと受けたい仕事」が変わるかもしれません。
2. 案件ごとに、売上と直接かかった費用を一行にする
表計算ソフトを開き、一行に一案件ずつ書きます。最初に入れるのは案件名、売上、その仕事のために支払った費用です。通帳への入金額をそのまま転記すると、振込手数料などが引かれている場合があるため、請求書や売上の記録と照らします。
費用は「その案件を受けなければ発生しなかったか」で拾うと整理しやすくなります。外注先から月単位でまとめて請求される場合は、明細を確認して案件ごとに分けてください。分けられないものは推計と書き、正確な金額と混ぜないようにします。
- 案件にひもづく外注費
- 使用した材料や仕入れた商品の原価
- その案件だけで発生した交通費や送料
- 売上に応じて発生する決済手数料
税抜と税込が混ざると比較がずれるので、記帳方法に合わせてそろえます。どちらを使うか迷う場合は税理士に確認してください。
売上からこれらの費用を引いた額を、この表では「案件の残り額」と呼びます。家賃、共通のソフト代、役員報酬などをまだ引いていないため、会社の最終的な利益ではありません。まずは案件同士を同じ条件で比べるための数字です。
3. 制作時間だけ数えると、手間の多い仕事を見落とす
作業時間には、納品物を作った時間に加え、受注前後のやり取りも含めます。制作は早く終わっても、細切れの電話や修正依頼に追われていれば、その分だけ社長の予定は埋まります。
終わった案件は、カレンダーやメールの履歴を見て、おおよその時間を入れましょう。過去の記録を細かく復元するより、これからの仕事は、その日の終わりに案件名と所要時間を残すほうが続きます。
- 見積もり、提案、受注前の打ち合わせ
- 準備、移動、制作や現場での作業
- 確認の連絡、修正、やり直し
- 納品、請求、入金確認
記憶で埋めた時間には「概算」と付けます。受注できなかった営業や会社全体の事務は、特定の案件に無理に割り振らず、共通の時間として別に残してください。
従業員も関わるなら、その人の時間を別欄に記録します。社長の手が離れた仕事でも、従業員の対応が増えていれば、会社全体の負担は軽くなっていないためです。
4. 残り額を時間で割り、差がついた理由を探す
一人で担当した案件なら、「案件の残り額÷社長の作業時間」で、社長が一時間使うごとにいくら残ったかを比べられます。この金額は社長の時給ではありません。 ここから会社の固定費や、受注につながらなかった営業の負担なども賄います。
外注の多い仕事は残り額が少なくても、社長の対応が短く済む場合があります。反対に、外注費がかからない仕事でも、自分が長時間抱えれば時間あたりの残り額は下がります。残り額の総額と時間あたりの数字を、横に並べて見てください。
従業員が関わる案件では、社長の時間だけを分母にすると、効率良く見えてしまいます。まず担当者全員の合計時間で比べ、人件費まで含む詳しい採算は別に計算します。一人で担当した案件とは条件を区別しましょう。
数字の低い案件が見つかったら、次を確認します。
- 当初の予定より増えた作業は何か
- 外注費が見積もりより増えた理由は何か
- 次回も同じ負担が発生しそうか
初回だけの設定や習得に時間がかかった仕事なら、次は短くなる可能性があります。ただし「慣れれば早くなる」で済ませず、省ける作業を具体的に挙げます。毎回起きる修正と、一度で終わる準備を分けると判断しやすくなります。
5. 採算が低い仕事は、次の受注条件を変える
一度の結果だけで取引をやめる必要はありません。まず、残り額を減らした原因に合わせて、次の見積もりや進め方を変えます。
例えば、確認が何度も戻るなら、着手前に依頼内容をそろえ、先方の確認担当者を決めます。追加依頼が膨らむなら、料金に含む作業と、別途見積もる作業を提示します。合意済みの案件に後から条件を押しつけず、進行中の追加分は着手前に相談してください。
- 修正が多い仕事は、対応範囲と回数を決める
- 急ぎ対応が多い仕事は、通常納期と追加料金を示す
- 外注費が読めない仕事は、外注見積もりを取ってから受注額を決める
- 移動や連絡が多い仕事は、訪問日や確認の機会をまとめる
条件を変えたら、次の同種案件で時間と残り額を測り直します。 値上げだけで解決しようとせず、作業を減らせたかも確認しましょう。月末に完了案件を見返す時間を予定に入れると、受注が増えた後も無理な条件に気づきやすくなります。
6. 今日やること
手元の請求書とカレンダーで埋められる範囲から始めます。分からない欄は空けて、今日の作業から記録してください。
- 直近の完了案件を選び、売上と直接かかった費用を一行ずつ書く
- 打ち合わせや修正も含めて作業時間を入れ、残り額と時間あたりの金額を比べる
- 手間が膨らんだ原因を一つ選び、次の見積もりに入れる条件を書く