売上をつくる・約6分
相見積もりを頼まれたら、何から確認する?
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
相見積もりでは、金額を出す前に比較条件と選び方を聞きます。提案に使う時間を決め、受けるか見送るかを判断しましょう。
相見積もりを頼まれたら、見積書を作る前に「何をそろえて比べるのか」と「何で依頼先を選ぶのか」を聞きましょう。金額だけ先に出すと、作業範囲が違う会社と比べられたり、受注後に想定外の対応が増えたりします。
創業したばかりなら、一件の相談にも力を入れたくなるものです。ただ、一人で営業と納品を担う会社では、提案を作る時間も限られます。詳しく調べるのは、条件を聞いてからで間に合います。
1. 見積もる前に、依頼の範囲をそろえる
「他社にも見積もりを頼んでいます」と言われても、その場で値引きを申し出る必要はありません。まずは「比較しやすい形でお出ししたいので、今回お願いしたい範囲を教えてください」と返します。
たとえばホームページ制作でも、文章や写真をお客さんが用意する場合と、制作会社が準備する場合では仕事量が変わります。公開後の更新まで含めるのかによっても、見積額は違います。同じ「ホームページ制作」という名前でも、中身がそろっているとは限りません。
最初のやり取りでは、次の項目を確認します。
- 完成させたいものと、その用途
- こちらに任せたい作業と、お客さん側で進める作業
- 希望する納期と、その日までに必要な理由
- 納品後に求める修正や継続対応
先方に依頼内容をまとめた資料があれば、共有してもらいます。競合の見積書や社名を無理に聞き出す必要はありません。知りたいのは、相手の価格よりも今回の仕事の条件です。
まだ範囲が決まっていないなら、未確定の作業まで含めて総額を約束しないようにします。前提を添えた概算を出し、どの項目が決まれば正式な見積もりに進めるかを伝えてください。
2. 「安い会社を選ぶ」と決まっていますか?
条件を聞いた後は、依頼先の選び方を確かめます。「何を重視しますか」だけでは「価格も品質も」と返ってきやすいため、今回の事情に沿って尋ねます。
開業日に間に合わせたいお客さんなら、安さよりも納期を守れる体制が判断材料になるかもしれません。以前の依頼先との連絡に困った経験があれば、連絡窓口や進捗報告の方法が気になっている場合もあります。こちらの強みを並べる前に、先方が困りそうなことを聞きます。
- 「価格以外で、依頼先を決める際に最優先する条件はありますか」
- 「今回の予算は決まっていますか。それとも見積もりを集めて検討する段階ですか」
- 「見積書はどなたが確認し、いつ頃までに依頼先を決める予定ですか」
- 「候補を絞った後に、内容を説明する時間をいただけますか」
予算を答えにくそうなら、追いかけて聞かず、必要な範囲を優先順に整理します。選定時期が未定の場合も、それだけで見送る必要はありません。翌月の発注を検討しているのか、社内で予算を取るための情報収集なのかで、今渡す資料の詳しさを変えられます。
金額だけで選ぶと分かった場合は、その条件で自社が無理なく対応できるかを考えます。価格重視のお客さんを説得し続けるより、合う仕事かどうかを早めに判断した方が、双方の手間を抑えられます。
3. 詳しい提案を作るか、ここで判断する
話を聞いたら、その日のうちに提案へ進むかを決めます。判断を延ばしたまま調査や資料作りを始めると、断りにくくなり、使う時間も増えていきます。
創業一年目は、受注できたときの売上に目が向きがちです。それに加えて、納品までの作業、外注の手配、修正対応が今の仕事に収まるかを確認してください。既存のお客さんへの納品が遅れるほどの提案作業は、引き受け方を見直す必要があります。
- 条件が明確で対応する余裕がある案件は、正式な見積もりを作る
- 範囲や予算が固まっていない案件は、前提付きの概算を出す
- 求められる納期や価格に対応できない案件は、理由を添えて見送る
受注判断に設計図や詳しい調査まで求められるなら、どこまで無償で用意するかも決めます。「見積もりでは作業範囲と進め方をご提示し、詳細設計はご契約後に進めます」と先に伝えておくと、資料を作り込む前に認識を合わせられます。有料の事前調査を提案する場合は、着手前に内容と料金への合意を取ります。
条件が分からない案件ほど、提案に使う時間の上限を決めるのが実務上の工夫です。受注の見込みを無理に数字にせず、「次の回答が来たら正式見積もりへ進む」と区切っておきましょう。
4. 見積書は、価格の横に条件を書く
提案へ進むなら、聞き取った条件を見積書に反映します。立派な説明資料を増やすより、先方がほかの案と並べたときに、違いを確認できる形に整えます。
金額から離れた場所に小さく条件を書くと、総額だけが一人歩きします。主な作業内容と費用を対応させ、対象外の作業も近くに記載してください。口頭で説明した修正範囲や納期の前提も残します。
- 見積額に含む作業と、含まない作業
- 納品物と、完了を確認する方法
- 納期と、お客さん側に準備してもらうもの
- 追加費用が発生する条件と、見積もりの有効期限
- 支払時期と支払方法
納期が選定基準なら、「素材を受領した後に制作へ着手する」など、予定を守るための前提まで説明します。「丁寧に対応します」という言葉だけより、相手が依頼後の動きを想像しやすくなります。
提出後に値下げを求められたら、最初に聞いた作業範囲へ戻ります。急がない部分を後回しにする、素材を先方に用意してもらうなど、減らせる作業を相談してください。値段を下げるときは、変更する条件も一緒に書き直すと、受注後の行き違いを防ぎやすくなります。
送付時には、説明や確認の機会も提案します。「比較して分かりにくい項目があればお知らせください。選定前に内容を確認するお時間をいただけますか」と添え、先方の検討日程に合わせて次の連絡日を決めましょう。
5. 今日やること
いま見積もりを求められている案件を一件開き、金額を計算する前に、分かっていない条件を埋めてください。相談がまだなければ、次の問い合わせに返す確認文を用意します。
- 作業範囲、希望納期、選定基準、決定時期のうち、不明な項目を相手に聞く
- 正式見積もり、概算、見送りのどれで返すかを決め、提案作業の時間を予定に入れる
- 見積書のひな形に、対象外の作業と追加費用が発生する条件の欄を作る