売上をつくる・約5分
いくらにする?初めての価格設定と値上げのコツ
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
創業期の悩ましい価格設定を整理します。原価や相場をふまえて利益を残し、値上げを切り出す手順がわかります。
1. 原価と「稼ぎたい粗利」から逆算する
会社を維持し、成長させるための価格設定には、客観的な計算が欠かせません。どんぶり勘定で安易に安くしてしまうと、売上が増えても手元にお金が残らない状態に陥ります。まずは基本となる原価と粗利(売上総利益)の計算から始めましょう。
サービスや商品の提供にかかる直接の支出が原価です。物販であれば商品の仕入代金、製造業であれば原材料費が該当します。コンサルティング業などのサービス業では、自らの動く時間や外注費が主な原価となります。創業期に多い失敗は、経営者自身の労働時間をゼロ円として計算してしまうことです。自分自身の稼働も、原価の一部として時間単価で見積もる必要があります。
次に、目標とする粗利率を設定します。粗利とは売上から原価を差し引いた利益です。一般的にサービス業であれば粗利率70%から80%、小売業であれば30%から50%が標準的な目安とされています。価格を計算する基本の式は「原価 ÷ (1 - 目標粗利率)」です。
たとえば、仕入原価や外注費が3,000円で、目標とする粗利率を70%とする場合、販売価格は「3,000円 ÷ 0.3 = 1万円」となります。粗利率を低く設定しすぎると、事務所の家賃や光熱費、会計ソフトの利用料といった固定費をまかなえなくなります。手元に残る利益から逆算して、冷静に最低限必要な価格を割り出す姿勢が大切です。
2. 競合の相場と自社の「強み」を比較する
算出した原価基準の価格が、市場の取引相場と大きく乖離していないかを確認します。同業他社が提供しているサービス内容と価格を調べ、客観的な比較を行います。
競合の価格を調べる際は、大手企業ではなく自社と同規模の競合を基準にしてください。大手企業は大量仕入や組織化された効率化によって、低い価格設定でも利益を出せる仕組みを整えています。従業員が0人から3人の創業期に、大手と同じ価格帯で真っ向から勝負を挑むのは得策ではありません。低価格での競争に巻き込まれると、体力だけが消耗していきます。
相場よりも高い価格を設定するためには、独自の強みを掛け合わせる必要があります。自社が提供できる付加価値を書き出してみましょう。
- 納品スピードが他社の半分で完了する
- 顧客に合わせたきめ細かなカスタマイズ報告書を添える
- 土日や夜間のトラブルでも迅速に対応する
このような「スピード」「手厚さ」「専門性」が強みとなります。競合の相場を把握したうえで、自社の強みを付加価値として乗せ、適正な価格に落とし込んでいきます。高価格を支払ってでも、自社の強みによる課題解決を望む顧客層を見極める手順が有効です。
3. 最初に安売りしすぎないための値付け手順
開業したばかりの時期は、実績や知名度がないために「安くしないと買ってもらえない」という不安に駆られがちです。しかし、一度決めた標準価格を下げることは簡単ですが、後から引き上げることは極めて困難になります。
安売りを避けるためには、割引前の本来の標準価格を最初に決めて提示する方法が推奨されます。
- 標準価格をあらかじめ15万円と定めておく
- 初期の3社に限り「創業記念モニター特典」として10万円で提供する
- 請求書や見積書には、標準価格15万円とモニター割引5万円を併記する
この手順を踏むことで、顧客は「本来は15万円の価値があるサービスを、今だけ特別価格で受けている」と認識します。割引期間が終了した後は、自然に標準価格での取引へ移行しやすくなります。
最初から低い標準価格を設定してしまうと、取引が長引くほど経営を圧迫します。見積書を作成する段階から、割引額を明確に分ける表記を徹底してください。将来的な適正価格での取引を見据えた関係性を、創業初日から構築していく設計が重要です。
4. 既存のお客さんに値上げを伝える3つのステップ
事業を継続するなかで、仕入価格の高騰やサービス内容の高度化に伴い、既存の顧客に対して値上げを依頼せざるを得ない場面が訪れます。関係性を崩さずに値上げを受け入れてもらうには、慎重な手順が必要です。
第1のステップとして、値上げ実施の少なくとも2か月から3か月前には打診を開始します。急な価格変更は取引先に大きな負担を与え、不信感を招く原因となります。相手の次期の予算計画に組み込んでもらえるよう、時間的な余裕を持って相談を持ちかけます。
第2のステップで、客観的な理由を添えて真摯に説明を行います。「仕入先からの価格改定要請があったため」「提供するレポートの分析項目を増やし、品質を向上させたため」など、納得を得やすい理由を伝えます。単に「会社の経営が苦しいため」という主観的な理由は避け、提供価値の変化や外的要因を数字とともに説明します。
第3のステップとして、激変緩和措置や選択肢を提示します。
- 段階的に価格を改定する移行期間を設ける
- 旧価格のまま機能を一部絞った簡易プランを提案する
- 年間一括契約を結んでもらうことで旧価格を一定期間据え置く
このように複数の選択肢を用意することで、取引先は一方的な押し付けと感じず、前向きな検討に入りやすくなります。値上げが資金繰りや今後の売上計画に与える影響については、経営数字全体の整合性を取るためにも、あらかじめ税理士に確認しながら計画を立てることをおすすめします。
5. 今日やること
- 自社の全サービスの原価を洗い出し、それぞれの粗利率を計算してみる。
- 競合となる同業他社3社のウェブサイトを調べ、価格表と提供内容を書き出す。
- 次回のお客さんに提示する見積書で、割引前の「本来の価格」を併記する準備をする。