税金と消費税・約6分
社長の住まいを社宅にする前に確認すること
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
社宅の本人負担は、家賃の半分とは限りません。契約前に税理士へ渡す資料と、会社・個人の負担を確認する順番を整理します。
1. 契約する前に、本人負担の計算を頼む
社長の住まいを社宅にするなら、物件を契約する前に、税理士へ本人負担の試算を頼みます。家賃を会社の口座から払うだけで、税務上も社宅として扱われるわけではありません。
一人会社でも、会社が借りた住宅を役員に貸す形は考えられます。ただし、会社と社長個人の間でも、貸す条件と家賃の負担を決める必要があります。会社名義なら家賃を全額負担してよい、という理解で進めると、給与として課税される問題が生じます。
創業直後は、物件選びと資金繰りを同時に進めがちです。申込金や契約費用を払う前に、次の順で確認してください。
- 税理士に、役員社宅として扱うための条件を聞く
- 管理会社に、法人契約と役員の居住が可能か聞く
- 計算に必要な物件資料を集め、本人負担を試算してもらう
- 会社と個人の支払額を確認してから契約を判断する
契約前に知りたいのは、経費になる額だけでなく、会社と個人が毎月いくら払うかです。
2. 税理士には間取り図と契約案を渡す
最初の相談では「家賃はいくらです」だけで終わらせず、候補物件の募集資料、間取り図、賃貸借契約書の案をまとめて渡します。契約案がまだなければ、管理会社から届いた条件のメールでも構いません。
役員社宅の本人負担を計算する際は、住宅の広さや建物の構造などによって扱いが分かれます。集合住宅では共用部分を含めた面積の確認が必要になる場合があり、募集広告の専有面積だけでは判断できないことがあります。設備や仕様によっては、通常の計算方法を使えない住宅もあります。(国税庁)
相談のメールには、資料に加えて次を記載します。
- 建物の構造、床面積、間取り、所在地
- 家賃、共益費、駐車場代と、それぞれの契約条件
- 敷金、礼金、仲介手数料、保証料などの初期費用
- 入居予定日、入居する人、仕事専用に使う部屋の有無
- 現在の契約名義と、法人契約へ変更する予定の有無
家賃に家具代や駐車場代が含まれる場合は、内訳も確認します。請求額をまとめて伝えるより、何に対する支払いか分かる状態のほうが、追加確認を減らせます。
3. 固定資産税の資料は借りる前に相談する
本人負担の計算では、土地や建物の固定資産税の課税標準額などを使います。これは、物件の売値や毎年納める固定資産税額そのものとは異なります。(国税庁)
賃貸物件では、借りる側がその資料を持っていないことが普通です。税理士に必要な項目と資料の候補を確認してから、管理会社を通じて貸主へ照会します。いきなり納税通知書一式を求めるより、計算に必要な項目を伝えるほうが話を進めやすくなります。
- 土地と建物について、どの年度のどの数値が必要か
- 集合住宅の場合、借りる住戸に対応する数値をどう確認するか
- 貸主から資料を受け取れないとき、ほかに確認する方法があるか
資料がそろわない段階では、本人負担を確定したつもりで契約しないでください。税理士に未確認の項目を伝え、試算の前提と、契約判断までに解消したい点を分けます。
返答待ちの間に入居日だけが近づくと、負担額を確認する余裕がなくなります。候補を絞った時点で、資料提供の可否も聞いておきましょう。
4. 「家賃の半分」でよいとは限りません
役員社宅では、税務上の方法で計算した一定額を本人から受け取るかどうかが、給与として課税されるかの判断に関わります。この計算額を「賃貸料相当額」と呼びます。(国税庁)
小規模な住宅に当たるか、会社が所有する住宅か外部から借りる住宅かなどで、計算方法が変わります。外部から借りる小規模でない住宅では、会社が払う家賃の半額と、別の算式による額を比較する扱いがあります。「役員社宅なら一律に半額を払えばよい」という理解では足りません。(国税庁)
本人負担は、会社の都合で決めた割合ではなく、物件資料に基づく計算から確認します。 税理士には、金額と一緒に次の点も回答してもらいます。
- 今回の住宅に適用する計算方法
- 本人から毎月受け取る額と、その計算根拠
- 共益費、駐車場代、水道光熱費を誰が負担するか
- 本人負担が計算額を下回る場合の給与課税の扱い
会社が貸す形を取らず、個人で契約した住まいの家賃を会社が負担する場合などは、原則として給与として扱われます。(国税庁)
すでに自宅を個人名義で借りているなら、振込元だけを会社口座に変える前に相談してください。法人契約への切替日と社宅として貸し始める日をそろえられるかも確認します。
5. 契約後の集金方法まで決めておく
試算が出たら、会社から出ていく家賃と、本人から受け取る額を資金繰り表へ入れます。本人負担分が入金されるまで、会社が家賃全額を支払う点も見落とさないでください。
初期費用は月々の家賃と分けて確認します。敷金のように返還される可能性があるお金もあり、支払った額がそのまま当期の経費になるとは限りません。会計処理は税理士に確認し、契約時に必要な現金は支払総額で見積もります。
運用を始める前には、社宅の使用条件と本人負担の集金方法を文書に残します。口頭で決めるだけだと、忙しい月に回収が抜けても気づきにくくなります。
- 使用開始日、本人負担額、支払日、支払方法を記録する
- 契約書、計算に使った資料、税理士の回答を一緒に保存する
- 毎月、会社の家賃支払いと本人負担の入金を確認する
- 家賃の改定や契約更新時に、負担額の再確認を依頼する
6. 今日やること
候補物件が一つあれば、契約前の相談を始められます。資料が足りない部分は空欄のまま送り、次に誰へ何を聞くかを決めてください。
- 募集資料と間取り図を保存し、家賃と初期費用の内訳を書き出す
- 税理士へ資料を送り、本人負担の試算と不足資料の確認を頼む
- 管理会社へ、法人契約の可否と固定資産税の計算資料について問い合わせる