税金と消費税・約8分
消費税の免税とインボイス登録の判断
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
創業1年目の免税期間の考え方と、取引先の状況に合わせたインボイス登録の判断手順を整理します。登録の期限と届出の順もあわせて確認します。
1. 創業1年目の消費税は「原則2期」免税
株式会社や合同会社を設立したばかりの会社は、資本金1,000万円未満などの要件を満たせば、原則として課税期間の最初の2期は消費税が免税になります(国税庁)。ここでいう「期」は事業年度です。3月決算なら、設立初年度とその翌期が目安です。
ただし次の場合は話が変わります。
- 特定期間(原則、前事業年度の開始から6か月)の課税売上高が1,000万円を超える
- 資本金が1,000万円以上で設立した
- 自ら課税事業者を選択した(インボイス登録に伴うケースを含む)
「うちは2年間まったく関係ない」と決めつけず、設立時の資本金と、これから見込む売上のペースを税理士に共有してください。免税のままでも請求書の書き方や経理の区分は後から効いてきます。
2. インボイス登録は「取引先が課税事業者か」で決める
インボイス(適格請求書)発行事業者になると、免税事業者であっても課税事業者になります。登録する・しないは、主に取引先の立場で判断します。
次の順で洗い出してください。
- 売上の相手は法人か、個人事業主か、一般消費者か
- 相手が課税事業者か(BtoBの法人取引が中心なら、相手は仕入税額控除を気にします)
- 相手から「インボイス登録番号をください」と既に言われているか
- 売上に占めるその取引先の割合(上位3社で何割か)
相手が消費者中心の小売・対人サービスなら、登録を急がなくても取引が止まる場面は少ないことが多いです。一方、元請け・発注元が課税事業者の建設、制作、コンサル、卸などは、登録の有無が取引条件の話し合いに入ることがあります。登録そのものが受注を約束するわけではありませんが、「番号がないと社内手続き上、発注しづらい」と言われるケースは創業直後から出てきます。
3. 判断のタイミングと届出の順番
設立から数週間〜数か月のあいだに、次の順で進めると迷いが減ります。
- 設立1か月以内:主要取引先候補に、支払い条件とあわせてインボイスの要否を聞く
- 売上が立ち始める前:税理士と「今期・来期の売上見込み」と「登録するならいつからか」を決める
- 登録する場合:適格請求書発行事業者の登録申請を出す(課税事業者の選択とセットで考える)
- 登録しない場合:見積・請求書の書式をどうするか(税率・税額の書き方)を決めておく
登録日をいつにするかは、免税期間をどこまで使うかと表裏一体です。期の途中から登録する、翌期の初日に合わせる、といった選び方があります。日付の入れ方を誤ると想定と違う期から課税になることがあるため、申請前に税理士に確認してください。
4. 登録した場合・しない場合の実務の差
登録した場合に社内で変わることは次のとおりです。
- 請求書に登録番号、適用税率、税率ごとの消費税額などを記載する
- 売上の消費税を申告・納付する(原則課税か簡易課税かの選択も検討)
- 会計ソフトの税区分を「課税売上」などに正しく付ける
登録しない場合でも、次はやっておきます。
- 請求書に「消費税」とだけ書くのか、税込金額のみにするのかを統一する
- 相手から控除できないと言われたときの説明(価格交渉の材料になることがある)を用意する
- 2期目以降、または売上1,000万円超が見えた時点で再検討する日程をカレンダーに入れる
簡易課税を選ぶかどうかは、みなし仕入率と実額の経費のバランス次第です。業種区分を誤ると税額がずれるため、選択届出の期限とあわせて税理士に確認してください。
5. よくあるつまずき
創業直後に多いのは次のパターンです。
- 取引先に急かされて中身を理解しないまま登録申請した
- 免税のつもりが、特定期間の売上判定を見ていなかった
- 請求書のテンプレートがインボイス要件を満たしていなかった
- 個人事業のころの登録番号と法人の番号を混同した
法人設立後は、法人として別途登録の手続きが必要です。個人時代の番号をそのまま使わないでください。また、一度登録してから取消すにも届出とタイミングの制約があります。「とりあえず登録」より、先に取引先リストと売上見込みを紙に書く方が安全です。
6. 今日やること
- 売上の上位取引先を3社書き、課税事業者かどうかとインボイス番号の要否を確認する
- 資本金・決算月・今期の売上見込みをメモし、税理士に免税の期間と登録時期を照会する
- 今使っている見積書・請求書のひな型に、税率と税額の欄があるかチェックする