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経営の数字・約6

値引きを頼まれたら、何件多く売ればいい?

公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論

値引きした分を取り戻すには、売上より利益で販売数を比べます。必要な件数を計算し、受けられる条件を決めましょう。

1. 1割引きでも、販売数は1割増しで足りません

値引きを頼まれたら、返事の前に「同じ利益を残すには、あと何件売る必要があるか」を計算します。価格を下げても、仕入れ代や外注費まで同じ割合で下がるとは限りません。1件から残る利益が薄くなると、想像以上に販売数を増やす必要があります。

創業したばかりだと、注文を逃したくない気持ちから、その場で値引きを受けたくなるものです。ただ、仕事が増えても残るお金が変わらなければ、社長の時間だけが埋まっていきます。

計算を始める前に、相手の希望をそろえましょう。「少し安くしてほしい」だけでは、比べる条件が決まりません。

  • どの商品や作業を、どの価格まで下げてほしいのか
  • 注文数は今回だけか、一定期間の合計か
  • 納期や納品回数は、元の見積もりと同じか

「条件を確認して、明日お返事します」と一度持ち帰って構いません。値引き後の注文数が約束されているか、相手の期待にとどまるかも分けて聞きます。

2. まず、1件売るたびに残る金額を出す

手元に直近の見積書と、仕入れ・外注の明細を置きます。売価から、その注文が増えると一緒に増える費用を引いてください。商品なら仕入れ代、梱包材、送料、決済手数料などです。受託の仕事なら、案件ごとの外注費や材料費が当てはまります。

売上に応じて増える費用を「変動費」、それを引いて残る金額を「限界利益」と呼びます。この利益から家賃や毎月の役員報酬などを払い、会社の利益を残します。

1件あたりの限界利益=販売価格-1件あたりの変動費です。今回の比較では、値引き前後で毎月の家賃などが変わらないことを前提にします。

  • 販売価格と費用は、消費税込み・抜きの基準をそろえる
  • 送料は、1件分なのかまとめて発送する分なのかを確かめる
  • 売価に連動する手数料は、値引き後の価格で計算し直す

社長自身の作業時間も横にメモしておきます。注文が増えても役員報酬が同じなら、この計算の変動費には通常含めません。ただし、時間が足りず外注を増やすなら、その追加費用を反映する必要があります。費用の扱いに迷ったら、税理士に確認してください。

3. 40件の利益を守るには、54件必要な場合も

数字を置いて比べます。以下は制度上の基準ではなく、計算のための仮定です。同じ商品を月に40件販売し、1件の変動費が元の販売価格の60%だとします。

値引き前は、1件売ると元の価格の40%が残ります。ここで販売価格を10%下げ、1件の変動費は変わらないとすると、残る額は元の価格の30%になります。

売価の下落は10%でも、1件から残る利益は40から30へ、25%減っています。そのため、販売数を10%増やした44件では、元の利益に届きません。

必要な販売数は、次の順で求めます。

  • 値引き前の1件あたりの限界利益に、元の販売数を掛ける
  • その合計を、値引き後の1件あたりの限界利益で割る
  • 件数に端数が出たら、切り上げる

式にすると、必要販売数=元の販売数×値引き前の限界利益÷値引き後の限界利益です。

今回なら「40件×40÷30」で約53.3件となり、必要なのは54件です。元の40件より14件、割合では35%多く売って、ようやく値引き前の利益を上回ります。40と30は、どちらも元の販売価格を基準にした比率なので、そのまま割り算に使えます。

なお、値引き後に1件から残る額がゼロ以下なら、販売数を増やしても元の利益を取り戻せません。価格か費用、提供する内容を見直す段階です。

4. その14件を、今の人数で受けられますか

計算で必要件数が出ても、その件数を販売し、納品まで終えられるかは別に確かめます。一人社長なら、追加の仕事を処理する間に営業や請求が止まることもあります。

先ほどの例で、1件の作業に1時間かかると仮定すると、追加の14件には14時間必要です。今月の予定表を開き、その時間をどこに置くかまで確認します。人を頼む費用が増えるなら、先ほどの計算にも戻してください。

また、今回の計算は、比べる販売分をすべて同じ価格で値引きする前提です。特定のお客さんの注文だけを値引きする場合は、対象となる注文を抜き出して比べます。

  • 値引きが適用される商品と件数
  • 対象の注文から残る利益の合計
  • 追加で発生する作業時間と費用

「次も頼むから安くして」という話なら、未確定の次回注文を件数に足さないほうが判断しやすくなります。まず今回の注文だけで、残る利益を確かめましょう。

条件が合わなければ、納品をまとめる、仕様を絞る、修正回数を減らすといった案を出します。費用や時間が実際に減る条件なら、価格を下げる余地を計算できます。「まとめて発注いただき、納品も一度にする条件なら、この価格でお受けします」と、値引きと条件を一緒に伝えてください。

5. 今日やること

次の値引き依頼には、必要件数と予定表を見てから返事をしましょう。まずは、よく売る商品やサービスを一つ選んで計算します。

  • 直近の見積書から、販売価格と1件ごとに増える費用を書き出す
  • 想定する値引き額を入れ、同じ利益を残すための販売数を求める
  • 追加件数をこなす時間を確認し、提示できる注文・納品条件を決める

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