経営の数字・約6分
作業時間の見積もり、実際と何時間違う?
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
見積もった時間と実際の作業時間を、工程ごとに比べます。差が出た理由を整理し、次の案件の予定を直しましょう。
1. 終わった仕事を一件、工程別に振り返る
次の仕事を見積もる前に、直近で終えた一件の予定時間と実際の作業時間を比べましょう。創業したばかりの会社では、社長自身が営業から納品まで担います。慣れない作業に時間がかかっても、納品すると次の仕事に追われ、同じ見積もりを使い続けがちです。
「思ったより大変だった」だけでは、次も予定が詰まります。まずは先月終えた案件のうち、今後も似た注文がありそうなものを選んでください。特殊な仕事より、繰り返し受けたい仕事から始めると、振り返った結果を使えます。
比べる単位は案件全体だけでなく、途中の工程です。細かすぎる区分は続かないので、普段の仕事の流れに合わせます。
- 準備:資料の確認、調査、打ち合わせ
- 主な作業:制作、加工、設定、資料作成
- 確認と修正:社内確認、顧客からの修正対応
- 納品対応:提出、操作説明、納品後の連絡
見積書に作業時間を書いていなくても、社内用のメモで構いません。当初の予定が残っていなければ、後から思い出した数字だと分かるようにしておきます。
2. 合計二時間の超過でも、直す工程は違う
たとえば、資料作成を八時間で終える予定が、実際には十時間かかったとします。合計だけなら「次は十時間」と直せますが、それだけでは何に時間を使ったのか分かりません。
工程別に記録を並べると、次のような差が見えてきます。以下は説明用の例です。
- 準備:見積もり一時間、実績二時間、差は一時間増
- 作成:見積もり五時間、実績四時間、差は一時間減
- 確認と修正:見積もり一時間、実績三時間、差は二時間増
- 納品対応:見積もり一時間、実績一時間、差はゼロ
差は「実績時間−見積時間」で計算します。プラスなら予定を超え、マイナスなら短く終わっています。
この例では、作成自体は予定より早く済んでいます。作成時間を増やしても、修正が膨らむ理由は残ります。合計の超過を、すべての工程へ一律に上乗せしないのが、次の予定を直す出発点です。
さらに、準備には資料不足、修正には認識違いがあったのかもしれません。メールや打ち合わせメモを開き、増えた工程から順に経緯を確かめます。
3. 待っていた時間と、手を動かした時間を分ける
今から記録を始めるなら、作業の開始時と終了時に時刻を残します。一日の終わりに記憶だけで埋めると、短い電話や確認メールが抜けやすくなります。表計算や普段の予定表で十分です。
ただし、顧客の返事を二日待ったからといって、二日分を作業時間に加えると実態が見えません。実際に働いた時間と、納品までの待ち時間は別に記録します。 返事待ちの間に別の仕事を進められるかどうかも、予定を組む材料になります。
最低限、次の内容を残してください。
- 作業日と案件名
- 工程名と実際に作業した時間
- 作業が止まった理由と再開した日
- 当初の依頼から増えた作業の内容
途中で別案件の電話に対応したら、その分は元の案件から外します。従業員と二人で一時間打ち合わせた場合、会社全体で使った作業量は二人分の計二時間です。予定表上の一時間と混ぜないよう、担当者ごとに記録します。
請求対象にならない連絡や修正も、社内の記録には含めます。請求できた時間だけを集めると、仕事を終えるために使った時間が少なく見えてしまいます。
4. 時間が増えた理由で、次の直し方を変える
超過した工程には、理由を一文添えます。「自分の作業が遅かった」だけでは、次に何を変えるか決まりません。どの資料が足りず、どこでやり直したのかまで書くと、着手前の準備に戻せます。
先ほどの例で、顧客から届いた資料を整理するために準備が一時間増えたなら、次回は資料の提出形式を先に伝えます。それでも毎回整理が必要なら、準備時間として見込むほうが現実的です。
修正についても、依頼内容が増えたのか、こちらの確認が足りなかったのかで対応が変わります。
- 毎回必要な作業を忘れていた場合は、次の見積項目に加えます。
- 作り始めてから認識違いが分かった場合は、途中確認を予定に入れます。
- 当初の範囲を超える依頼があった場合は、追加分の時間を分けて残します。
- 初回だけ設定に時間がかかった場合は、再利用できる手順を残します。
追加依頼に使った時間まで通常作業へ混ぜると、同じ内容の案件を比べにくくなります。一方、毎回発生する小さな修正を「今回だけ」と扱うのも避けたいところです。繰り返しているなら、通常の工程に組み込みます。
時間が短くなった工程も確認してください。前の資料を流用できたのか、単に今回の内容が易しかったのかで、次も短縮を見込めるかが変わります。
5. 次の見積もりには、時間と条件を残す
次の依頼が来たら、似た案件の実績を開いてから予定を立てます。比べるのは仕事の名前だけではありません。資料の量、難しさ、確認する人数、修正の範囲までそろえて見ると、前回の数字を使いやすくなります。
準備に二時間かかった実績を使うなら、「資料の整理を含む」と書き添えます。修正が三時間だった案件も、途中確認を加えることで短縮を見込むなら、その理由を残してください。期待だけで時間を削らず、終わった後に見込みどおりだったか確認します。
次回のメモには、工程ごとの時間に加えて次を記載します。
- 見積もりの前提となる資料の量と受領予定日
- 顧客に確認してもらう内容と返答の希望日
- 通常作業に含める修正の範囲
- 未経験の作業と、時間を読めていない理由
まだ時間を読めない部分は、名前を付けて残しましょう。 「念のため余裕を足す」だけより、何を調べれば見積もりを絞れるのか分かります。必要なら、その部分を先に小さく試して所要時間を測ります。
案件が終わるたびに記録し、次の見積もりで一か所でも予定を直す。この往復で、自社の仕事に合った時間の目安がたまっていきます。
6. 今日やること
まず一件分を埋めれば、次に受ける仕事の予定を直す材料になります。正確に思い出せない時間は推測と記し、進行中の案件から実測を始めましょう。
- 直近で終えた一件を選び、工程別に見積時間と実績時間を並べます。
- 時間が増えた工程に理由を一文書き、追加作業や待ち時間を分けます。
- 次の案件の見積もりに、今回分かった作業時間と前提条件を反映します。