税金と消費税・約6分
家族を役員にして給料を払うときの税金
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
家族への役員報酬は、仕事内容や金額、支払い方によって税務上の扱いが変わります。役員にする前から支払い後までの確認手順を整理します。
1. 家族でも、仕事に見合う報酬なら経費にできます
家族への役員報酬を会社の税金の計算で経費にするには、実際の仕事に見合う金額を決め、役員給与の税務ルールに沿って支払う必要があります。配偶者や親という理由だけで対象外になるわけではありません。
ただし、登記に名前があるだけでは、その金額を支払う根拠として不十分です。仕事内容に対して不相当に高い部分や、支払い方の要件を満たさない給与は、会社の利益から差し引けない場合があります。税務では、この差し引ける経費を「損金」と呼びます(国税庁)。
創業直後は「夫婦で働くから、利益を半分ずつ受け取ろう」と考えがちです。報酬を決める前に、誰が、どの仕事を、どこまで責任を持って担うかを整理してください。
- 担当する業務と、毎月のおおよその作業量
- 契約や支払いなど、本人が判断する範囲
- 報酬を支払っても残せる会社の運転資金
個人事業で家族に払う給与の仕組みを、そのまま法人に当てはめないようにしましょう。
2. 役員にする前に、任せる仕事を一枚に書く
最初に決めるのは肩書きより仕事です。例えば、請求書の作成だけを頼むのか、請求から回収まで管理し、支払い予定も判断してもらうのかで、責任の重さが変わります。
毎月の経理を任せるなら、「領収書を整理する」だけで終わらせず、締め日までに何を完成させるかを書きます。税理士への資料送付、未入金の確認、資金繰りの報告まで担うなら、それぞれの頻度も添えましょう。売上がまだ少なくても、開業準備や管理の仕事があるなら、その内容を具体的に残します。
代表の指示に沿って一部の作業をする役割なら、従業員として雇う形も検討できます。ただし、税務上は登記上の肩書きだけでなく、経営への関与などから役員に該当する場合があります。家族なら自由に区分を選べる、とは考えないでください。
- 業務一覧に、担当者と完了の目安を書く
- 経営判断に関わる範囲を本人と確認する
- 役員か従業員かの扱いを税理士に相談する
この段階で報酬の希望額も共有します。必要な生活費と仕事内容が釣り合わない場合は、金額を先に確定せず、会社から家計へ出すお金全体を見直します。
3. 月額は「家計に欲しい額」だけで決めない
家族の生活費が必要でも、それだけでは会社がその報酬を払う理由にはなりません。不相当に高額かどうかは、職務の内容、会社の収益、従業員への給与、同種・同規模の会社の役員報酬などを踏まえて判断されます(国税庁)。
そこで、仕事の一覧と一緒に、金額の根拠をまとめた資料を保存します。似た業務の求人給与は検討材料になりますが、その水準なら税務上問題ないと保証するものではありません。勤務時間だけで割り切れない経営責任も含め、自社で任せる役割との違いを説明できるようにします。
支払い余力も別に確認してください。利益の見込みがあっても、入金が遅ければ報酬の支払いに困ります。家族分を加えた後の報酬総額と、会社が負担する社会保険料などを資金繰り表に入れましょう。
- 担当業務や責任に対する月額の根拠
- 他の役員や従業員との金額のバランス
- 売上が見込みを下回った場合の支払い余力
仕事内容の説明と、金額の説明をセットで残すと、税理士も妥当性を検討しやすくなります。「この金額までなら家族に払ってよい」という一律の安全枠はありません。
4. 支払い開始前に、月額と決議をそろえる
毎月の役員報酬では、一定の間隔で支払い、各支給時期の支給額を同額にする「定期同額給与」が基本になります。通常の報酬改定は、原則として事業年度開始から3か月以内などの要件があります(国税庁)。
創業1年目は、設立時から役員にするのか、期の途中で新しく就任するのかでも確認が変わります。「設立後3か月以内なら何をしてもよい」と捉えず、就任日、決議日、支給開始日を税理士に伝えてから進めてください。
株式会社なら、定款や機関設計に応じて株主総会などで報酬を決め、議事録を残します。合同会社は決定の仕組みが異なるため、同じ書類を流用せず確認しましょう。登記の手続きと報酬の決定は、分けて整理します。
- 就任日と、必要な登記手続きを確認する
- 月額、支給日、支給開始時期を決める
- 必要な決議を行い、議事録などを保存する
売上のよい月だけ増額したり、決算直前にまとめて追加したりすると、損金にできない場合があります。賞与にも別の要件があるため、追加で払う前に税理士に確認してください。
5. 振込記録と仕事の記録を毎月残す
支払いが始まったら、給与計算、源泉徴収、本人への支払い、帳簿への記録を一続きで処理します。本人名義の口座への振込にそろえると、会社から誰へ支払ったかを追いやすくなります。
報酬を受け取る家族には、原則として給与所得として所得税・住民税が関わります。配偶者控除などの適用や社会保険の扶養にも影響し得るため、会社の税金だけで得かどうかを判断しないでください。所得税の扱いは税理士に、社会保険は年金事務所や社会保険労務士などに確認します。
勤務実態の証拠には、本人が作った請求一覧、資金繰りの報告、業務上のメールなどを使います。毎日長い日報を書くより、普段の成果物を月ごとのフォルダに保存するほうが続けやすいでしょう。
- 給与台帳と振込記録を照合する
- 担当業務の成果物や判断の記録を保存する
- 業務量が変わったら、報酬を変える前に相談する
議事録や振込記録があっても、実際に働いていないという問題は解消しません。反対に、仕事をしていても税務上の支払い要件を外す場合があります。仕事の実態と支給方法の両方を確認しましょう。
6. 今日やること
まだ支払っていないなら、最初の給与計算前に資料をそろえます。すでに払っている場合は、日付をさかのぼって書類を整えず、実際の経緯を税理士に伝えてください。
- 家族と担当業務、作業量、判断する範囲を一枚に書く
- 希望月額を資金繰り表に加え、会社に残るお金を確認する
- 就任日、決議の状況、支給予定を税理士に送り、税務上の扱いを確認する