売上をつくる・約6分
初めての契約書、どこを確認する?
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
契約書では、仕事内容と完了条件、支払い、責任の範囲を確認します。小さな会社が署名前に見る順番を整理します。
1. 最初に「何を、どこまでやるか」をそろえます
初めての業務委託では、契約書の難しい言葉より先に、見積書と仕事内容が一致しているかを見ます。「運用支援一式」「制作業務全般」だけでは、依頼する側と受ける側で想定がずれます。受注する場合も、外注する場合も、作業の範囲を具体化する順序は同じです。
例えばウェブサイト制作なら、ページ数だけでなく、原稿を用意する人、修正回数、公開作業を含むかを決めます。業務委託という名称でも、完成を約束するのか、一定の作業を行うのかによって、契約の性質や責任は変わります。
- 成果物や作業内容、納期、相手に用意してもらうものを確認します。
- 料金に含む範囲と、追加料金になる作業を分けます。
- 契約書・見積書・仕様書で内容が違う場合の優先順位を確認します。
契約書は、仕事を始める前の認識合わせに使います。口頭で合意した条件も、契約書や双方が確認できる記録に反映してから着手しましょう。
2. 支払条件と検収を、ひと続きで読みます
金額の次に見るのは、いつ請求でき、いつ入金されるかです。「検収後に支払い」とあっても、検収の期限や合格基準がなければ、相手の確認が終わるまで請求できない状態になりかねません。
成果物を納める仕事では、納品方法、確認期間、不備の通知方法、修正する範囲をそろえます。継続的な支援なら、成果物の検収より、月ごとの作業報告や業務実施の確認が適することもあります。実際の仕事に合う条件かを見てください。
- 支払期日は「月末締め翌月末払い」など、日付を特定できる形にします。
- 検収の基準と期限、返答がない場合の扱いを確認します。
- 着手金や分割払い、実費、振込手数料の負担を決めます。
「相手の顧客から入金されたら払う」という条件は、自社で管理できない事情に入金が左右されます。創業直後は特に、先に支払う外注費と釣り合うか確認しましょう。取引によっては、契約とは別に法律上の支払期限などが適用されるため、個別に確認が必要です。
3. 秘密保持と成果物の権利を分けて確認します
秘密保持契約は、受け取った情報を何に使い、誰に見せてよいかを決めるものです。単に「外部に漏らさない」と理解すると、外注先との共有やクラウドサービスの利用が契約違反になる場合があります。
自社が情報を渡す側なら、顧客情報や未公開資料が保護の対象に入るかを見ます。受け取る側なら、すでに公開されている情報などの除外、保管方法、契約終了後の返却・削除が実行可能かを確認します。
- 秘密情報の範囲と、利用してよい目的を確認します。
- 従業員・再委託先への共有や、外部サービスへの入力条件を確認します。
- 秘密保持の期間と、終了時の情報の扱いを確認します。
成果物の権利は、秘密保持とは別の論点です。著作権の帰属・移転時期、利用範囲、元から持っている素材やノウハウの扱いを読みます。制作を外注して代金を払っても、希望する権利がすべて自動的に移るとは限りません。実績として公開したい場合も、公開の可否を事前にそろえます。
4. 中途解約と損害賠償は、署名前に読みます
仕事が順調なときには目立たない条項ほど、途中で計画が変わったときに影響します。相手がいつでも解約できる一方で、作業済みの代金や手配済みの外注費について定めがないと、負担の押し付け合いになります。
損害賠償も、受注額だけを見て判断しないでください。責任の範囲や上限が広すぎると、小さな案件でも会社が負いきれない負担につながります。ただし、上限を置けばどの責任も免れる、というものではありません。
- 中途解約の予告期間と、作業済み部分の精算方法を確認します。
- 損害賠償の対象、上限、上限が適用されない場合を確認します。
- 自動更新、競業の制限、再委託の制限も読みます。
納得できない条件は、問題になりそうな場面を具体的に伝えて修正を相談します。「この条件で途中解約された場合、先に発注した費用はどうなりますか」と聞くと話を進めやすくなります。責任範囲を判断しきれない契約は、署名前に弁護士へ相談します。
5. 電子契約でも、内容確認と保存は必要です
電子契約は、紙の押印や郵送を省けますが、リンクを開いて承認するだけで済ませないようにします。相手の法人名、契約する権限のある人、金額、添付資料を確認し、社内では誰が締結するかを決めます。一人社長なら、自分の確認手順を固定します。
締結後は、契約書本体だけでなく、添付の仕様書や締結の記録も保存します。サービス内だけに置く場合は、解約後も取り出せるかを確認しておきます。電子取引データの税務上の保存方法は税理士に確認してください。
- 署名前に、最終版と交渉した内容を照合します。
- 締結済みデータと添付資料を、案件ごとにまとめます。
- 更新日と解約通知の期限を、カレンダーに登録します。
ひな形は出発点です。取引の内容や適用される法律によって必要な条件は違うため、前の案件の契約書をそのまま使い回さないようにしましょう。
6. 今日やること
- 次に結ぶ契約の仕事内容、追加料金、完了条件を見積書と照合します。
- 支払期日、検収期限、中途解約時の精算方法に印を付けます。
- 責任範囲など判断できない条項を抜き出し、署名前の相談事項にします。