税金と消費税・約6分
1年目の赤字、翌年にどう引き継ぐ?
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
1年目の赤字は、申告の条件を満たせば翌期以降の利益から差し引けます。初決算で確認することと、残す資料を整理します。
1. 赤字は、申告して翌年の利益から差し引きます
1年目の赤字を翌年以降の税金計算に使うには、赤字が出た年の確定申告と、その後の継続した申告が必要です。通帳の残高が減っただけでは、税務上の赤字として引き継げません。
たとえば、設立直後に広告や備品へ支出し、売上が追いつかなかった会社でも、翌年には利益が出るかもしれません。そのとき、過去の赤字を利益から差し引いて税金を計算する仕組みを「欠損金の繰越控除」と呼びます。
現在設立する会社では、条件を満たす欠損金の繰越期間は法人税で10年、法人住民税で5年です。ただし、年度ごとに使える上限があり、中小法人等には原則として所得の全額まで控除できる扱いがあります。自社がその対象かは税理士に確認してください(国税庁)。
赤字の金額が、そのまま税金から引かれるわけではありません。 差し引く相手は翌期以降の所得です。翌年も赤字なら、その年は使わず、残額を期限内の次の年度へ引き継ぎます。
初決算の前に、次を確認しておきます。
- 赤字が出る年度に青色申告の承認が有効か
- 税務上の欠損金がいくらになりそうか
- 繰越控除に必要な申告書を誰が作成するか
2. 決算書の赤字と、引き継げる赤字は違います
会計ソフトの損益計算書が赤字でも、その金額をそのまま翌年に持ち越すとは限りません。税金の計算では、決算書の利益や損失に調整を加えて、所得や欠損金を求めます。
帳簿で費用にした支出の中には、税務上は費用として認められないものがあります。役員報酬や交際費などは税務上費用として認められない場合があります。逆に、借入金の元本返済は口座からお金が出ますが、その支出自体は費用になりません。
初めての決算では、「お金が足りない」「帳簿が赤字」「税務上の欠損金がある」を分けて確認してください。税理士には、決算書の説明に続けて、申告書で繰り越す金額を示してもらうと話がつながります。
- 決算書に載る当期の損失額
- 税金計算で加算・減算する主な項目
- 翌期へ繰り越す欠損金の金額
赤字なら会社の税金がすべてゼロになるわけでもありません。法人住民税の均等割は別に確認し、納税用のお金を残します。
3. 初決算では青色申告と申告期限を確認
欠損金を繰り越すには、赤字が生じた年度に青色申告書を提出し、その後も連続して確定申告書を提出することが要件です。 帳簿書類の保存も求められます(国税庁)。
設立時に青色申告の申請を済ませたつもりでも、提出した書類と受信通知を見直してください。税理士を途中で決めた場合は、設立時の届出が契約前のため、確認が抜けることがあります。「青色でお願いします」と伝えるだけで済ませず、どの年度から承認が有効かを確かめます。
法人税の確定申告期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です(国税庁)。売上が少ない、納税額が出なさそうという理由で、決算作業を後回しにしないようにします。
決算日が近づいたら、税理士へ次の資料をまとめて渡します。
- 青色申告の承認申請書の控えと提出記録
- 決算日までの請求書、領収書、預金・カードの明細
- 未入金の売上、未払いの経費、在庫の一覧
申請の控えが見つからない、申告期限を過ぎた、過去に申告をしていない年度がある場合は、その事実を先に伝えます。欠損金を使えるかは状況によるため、自己判断で諦めたり、翌年の帳簿だけで調整したりせず、税理士に確認してください。
4. 申告が終わったら、計算の根拠まで残す
申告書の提出後は、税理士から届いた決算書だけを保存して終わりにしないでください。引き継ぐ赤字の計算と、その元になった取引を後から確認できる状態にします。
欠損金が生じた現在の事業年度では、帳簿書類の保存期間は原則10年です。起算日は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日です(国税庁)。単に「設立から10年」と数えないよう、保存期限を税理士に確認して記録します。
会社側で受け取っておきたい資料は、次のとおりです。
- 法人税申告書一式と、電子申告の受信通知
- 決算書、勘定科目内訳明細書、総勘定元帳
- 請求書、領収書、契約書、預金明細などの根拠資料
申告書のうち、税務上の所得への調整は主に「別表四」、繰り越す欠損金の計算は「別表七(一)」で確認します。名称を覚えるより、「翌年へ引き継ぐ金額はどこですか」と尋ね、そのページを手元に残すほうが実務で役立ちます。
資料は税理士任せにせず、会社でも一式を保管します。 会計ソフトを解約する前には帳簿を出力し、電子で受け取った請求書などは元データも保存してください。保存方法の要件は税理士に確認します。
5. 翌年は、残額と使える期限を見直します
2年目に利益が出始めたら、前期の欠損金を踏まえて納税額を見積もってもらいます。「去年が赤字だったから今年も納税はない」と考えていると、利益が残額を超えたときに資金が足りなくなります。
管理する項目は、発生した年度、繰越額、当期に使った額、残額、使える最終年度です。赤字の年度が続く場合も、発生年度ごとに分けて残します。毎年の申告後に税理士から明細を受け取れば、自分で税額計算を抱え込む必要はありません。
- 利益の見込みが変わったら、欠損金控除後の納税見込みを聞く
- 決算後に、申告書の繰越残額と管理している金額を照合する
- 税理士を変更するときは、過年度の申告書と帳簿資料を渡す
繰越控除を使うために余分な経費を増やす必要はありません。売上を積み上げ、手元資金を残しながら、過去の欠損金を申告で反映していきます。
6. 今日やること
まずは設立時の届出と、初決算の担当を確認してください。すでに申告済みなら、翌期へ繰り越す金額が分かる資料を受け取ります。
- 青色申告の承認申請書の控えを探し、適用される年度を確認する
- 税理士へ「初年度の欠損金見込みと、繰越しに必要な資料」を問い合わせる
- 年度別の保存フォルダを作り、申告書一式・受信通知・帳簿資料をまとめる