経営の数字・約6分
社長、自分の時給はいくら?
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
実働時間と役員報酬から、自分の時給を計算します。時間の使い道と仕事の採算を見比べ、次の受注を選びます。
1. 役員報酬を、仕事に使った全時間で割る
自分の時給は、月の役員報酬を、その月に働いた時間で割ると求められます。創業直後は売上や口座残高ばかり気になりますが、社長の時間も、使えば減る有限な資源です。受注が増えたのに夜も休日も仕事なら、まず一度計算してみてください。
使うのは、手取り額ではなく、税金や社会保険料を差し引く前の役員報酬です。時間には納品に直結する作業だけでなく、商談、見積もり、経理、移動、仕事の連絡も含めます。
- 月額の役員報酬を確認します。
- 同じ月の実働時間を合計します。
- 役員報酬を実働時間で割り、時給を出します。
ただし、この数字は自分が費やした時間に対して、どれだけ報酬を受け取っているかを表すものです。会社がその時間でいくら稼いだかは、別に調べます。
設立したばかりで報酬を低く抑えていれば、計算結果も低くなります。無報酬ならゼロですが、仕事の価値がゼロという意味ではありません。生活費を賄えているかという問題と、会社の仕事が割に合うかという問題を分けて考えます。
2. 記録するのは、納品作業だけではありません
今日から、仕事の区切りで開始時刻と終了時刻を残してください。細かすぎる分類は続きません。予定表やメモに、案件名と何をしたかを書けば十分です。
最初の一週間は記録の練習にし、月の時給を出すときは一か月分を集めます。決算準備や大きな納品が重なった月は、その事情も添えます。忙しかった週だけを月全体に引き延ばすと、普段の働き方から離れた数字になります。
- 案件に使った時間は、商談から納品後の対応まで記録します。
- 会社全体の仕事は、経理や営業準備などの名前で記録します。
- 私用の時間や、自由に過ごせた待ち時間は除きます。
見落としやすいのが、短い電話や修正依頼への返信です。一回一回は短くても、一日に何度も入れば作業時間が減ります。正確な分数を思い出せない日は概算と記し、翌日までに埋めましょう。
複数案件を同時に進めた時間は二重に数えません。記録を忘れた部分を空欄のまま合計すると時給が高く出るので、月末に予定表と照らし合わせます。
3. 仕事の採算は「残った額÷社長の時間」で見る
次に、終わった案件を取り出します。請求額の大きい順に見るより、似た仕事を比べるほうが判断しやすくなります。
案件の売上から、その仕事のためにかかった仕入れ、外注費、送料などを引いてください。その残額を、社長が案件に使った全時間で割ります。
案件の時間当たり残額=(売上-案件に直接かかった費用)÷社長の実働時間です。
- 売上と費用は、税込・税抜の扱いをそろえます。
- 時間は、受注前の相談や見積もりも含めます。
- 追加修正や納品後の問い合わせも、同じ案件に足します。
役員報酬は、この計算で案件ごとに差し引きません。残額から役員報酬や家賃、ソフト代などを賄うためです。従業員が担当した時間の人件費を含めていない場合も、その旨を記しておきます。
出てきた金額は、そのまま会社の利益ではありません。また、自分の時給を上回っただけで「採算が取れた」とも判断できません。まずは同じ計算方法で案件を並べ、どの仕事に時間を取られているかを見ます。
一括契約や継続契約で費用の分け方に迷う場合は、税理士に確認してください。比較する途中で計算方法を変えると、良くなった理由が受注内容なのか計算の違いなのか分からなくなります。
4. 安い仕事を切る前に、時間が増えた理由を探す
時間当たり残額の低い案件を見つけたら、記録に戻ります。単価が低いのか、見積もりより作業が増えたのかで、次に打つ手は変わります。
たとえば、制作そのものは予定どおりでも、打ち合わせと修正が長引くことがあります。その場合、値上げだけを考える前に、打ち合わせ回数や料金に含める修正範囲を見積もりに書く余地があります。
- 相談が長引くなら、契約前に対応する範囲を決めます。
- 確認の往復が多いなら、着手時に必要な情報をまとめて受け取ります。
- 同じ作業を繰り返すなら、ひな型や手順書を作ります。
初回だけ準備に時間がかかる仕事もあります。次回から流用できる部分があるなら、初回の数字だけでやめる判断を下すのは早いかもしれません。一方、「慣れれば速くなる」と考えて同じ超過を繰り返しているなら、条件の見直しが必要です。
ここでの目的は、忙しい案件を順番に断ることではありません。次の一件で変える条件を、一つ決めることです。既存の約束は守り、次の見積もりや契約更新から調整します。
5. 空いた時間は、次の受注につながる予定にする
短時間で残額の多い仕事が分かっても、その注文が増えなければ会社に残るお金は増えません。仕事を減らして空いた時間には、何を入れるかまで決めます。
続けて頼まれやすいサービスの提案、過去の取引先への連絡、受注しやすかった提案書の改善など、具体的な予定にしてください。経理や入金確認は直接売上にならなくても、会社を動かすために残す時間です。
- 増やしたい仕事を一つ選びます。
- その仕事を受注するための行動を予定表に入れます。
- 翌月、報酬の時給と案件ごとの時間当たり残額を見直します。
外注も同じ考え方です。渡す作業だけでなく、説明や確認にかかる時間と外注費を見込みます。空いた時間に受注の見通しがなければ、短期的には手元のお金が減る場合があります。
最初の月の数字を合否判定にせず、条件を変えた次の案件と比べましょう。実働時間が減ったのか、残額が増えたのかを見れば、継続すべき改善策を選べます。
6. 今日やること
まずは今月の記録を始め、終わった案件を一件だけ計算してください。
- 役員報酬の月額を確認し、実働時間を記録するメモを作ります。
- 直近の一件について、売上・直接費用・使った時間を書き出します。
- 次の見積もりで変える条件を一つ決め、見積もりのひな型にメモします。