届出と保険・約9分
初めて人を雇うときの手続順
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
雇用契約書と労働条件通知、給与計算、ハローワーク・年金事務所、36協定まで。採用決定から初出社前後の順でまとめます。
1. 採用が決まったら、出社前にやる順
初めての雇用は、契約・社会保険・労働保険・給与の準備を入社日の前に進めるのが扱いやすいです。従業員0→1人のタイミングで、一人社長のときと手続きが一気に増えます。
入社前の目安です。
- 業務内容、勤務地、時間、賃金、試用期間、休日を文章で固める
- 雇用契約書または労働条件通知書を交わし、署名(または記名押印)と控えを双方で持つ
- マイナンバー・住民票記載事項・通勤経路・給与振込先など、手続に必要な情報の提出を依頼する
- 給与計算の締め日・支払日を決め、カレンダーに初回支払日を書く
口約束だけだと、後から「聞いた・聞いてない」になりやすいです。労働基準法上、労働条件の明示は使用者の義務として整理されています。有期契約か無期か、固定残業の有無など、入れ方が難しい条項は、必要に応じて社労士や税理士(給与周り)に確認してください。
2. 雇用契約書と労働条件通知書
労働条件通知書は、法令で明示が求められる事項を伝える書類です。雇用契約書は、合意の証として双方が持つ契約書です。実務では、通知事項を盛り込んだ雇用契約書を1通にまとめる会社も多くあります。
最低限そろえたい項目の例です。
- 契約期間(期間の定めの有無)と更新の有無・基準
- 就業場所と業務内容(変更の範囲の定め方にも注意)
- 始業終業、休憩、休日、残業の有無
- 賃金の決定・計算・支払方法、締日・支払日
- 退職に関する事項(自己都合の申出期限など)
交付タイミングは、できれば内定後すぐ、遅くとも就労開始までです。電子交付する場合は、本人が希望し、印刷できるなど要件を満たす必要があります。就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する場合に届出が必要、という整理です。人数が少なくても、遅刻や懲戒のルールを一枚にまとめておくと運用が安定します。
3. ハローワークと労働保険の届出
労働者を一人でも雇ったら、労働保険(労災・雇用)の手続が必要になります。労災は原則として全員、雇用保険は週の所定労働時間や雇用見込み期間などの加入要件を満たす人が対象です。
届出の流れの目安です。
- 労働保険の保険関係成立届を、期限の目安として成立した日から10日以内に提出する(所管は労働局などの案内に従う)
- 概算保険料の申告・納付を行う
- 雇用保険の適用事業所設置の届出、被保険者資格取得の届出をハローワークへ(資格取得の届出は、雇った月の翌月10日までが目安)
創業時にすでに役員のみで、初めて「労働者」を入れるケースでは、適用事業所の設置から始めることになります。パート・アルバイトでも要件を満たせば対象です。届出先や様式は事業所の所在地で分かれるため、案内に沿って進め、不明点は労働局・ハローワークまたは社労士に確認してください。
4. 年金事務所(社会保険)と給与計算
法人は、社長一人のときから社会保険(健康保険・厚生年金)の適用事業所になっていることが多いです。従業員を雇い、加入要件(所定労働時間・日数など)を満たす場合は、被保険者資格取得の届出を年金事務所(または事務センター)へ行います。期限の目安は事実発生から5日以内です。
給与計算で最初に決めることです。
- 基本給、諸手当、残業代の計算方法(1日・1か月の所定労働時間を明確に)
- 源泉所得税の税額表、社会保険料の控除開始月
- 住民税は入社時期により特別徴収の開始タイミングが異なる
- 給与明細の交付(控除内訳が分かる形)
役員報酬と従業員給与が混在する一人会社では、科目と賞与の有無を分けて管理します。保険料額や標準報酬の決め方、二以上事業所勤務などは個別性が高いため、年金事務所の案内とあわせ税理士・社労士に確認してください。初めての給与支払月に、源泉の納付(毎月または納期の特例)も再確認します。
5. 残業と36協定、就業のルール
法定労働時間(原則1日8時間・週40時間)を超えて働いてもらう場合、36協定(時間外・休日労働に関する協定)を結び、労働基準監督署へ届出する運用が必要です。届出のないまま時間外をさせることはできません。
初めて人を雇うときの実務ポイントです。
- 残業が見込まれる業務なら、入社前または直後に36協定の締結・届出を検討する
- 時間外の上限や特別条項の付け方は法令の枠内で設計する
- タイムカードや勤怠ツールで開始・終了時刻を記録する
- 固定残業代を使う場合は、何時間分・超過分の追加払いを契約書に明記する
「みなし残業だから記録不要」にはなりません。休憩の取得、休日の振り替え、深夜労働の割増も給与計算に直結します。協定の様式や届出の電子申請は、労働基準監督署の案内を参照し、作成に不安があれば社労士に確認してください。
6. 雇入れ後の初月に整えること
入社後30日以内を目安に、次を点検します。
- 雇用保険・社会保険の資格取得が受理されているか
- 初回給与の計算が契約どおりか(日割り・欠勤控除の有無)
- 年次有給休暇の付与ルール(比例付与など)の説明
- 安全衛生や業務マニュアルの共有、緊急連絡先の把握
試用期間中でも、条件を満たせば社会保険・労働保険の対象です。解雇や契約終了は、手続きと手当のルールが別途あるため、トラブルになりそうなときは早めに専門家へ相談してください(弁護士の紹介はここでは行いません)。
7. 今日やること
- 想定する勤務条件を箇条書きし、労働条件通知(または雇用契約書)の下書きを1枚作る
- 入社予定日を起点に、ハローワーク・年金事務所・労基署向け届出の提出期限をカレンダーに書く
- 給与の締日・支払日と、使う給与計算手段(ソフトまたは税理士委任)を決める