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経営の数字・約6

初めての採用、いくら売れば給料を払える?

公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論

給料以外の負担も足して、採用後に必要な売上を計算します。採用時の出費と入金までの資金も確認します。

1. 月給を決める前に、会社が払う総額を出す

月給25万円で人を雇うなら、毎月25万円を用意するだけでは足りません。会社が負担する保険料や交通費、仕事に使うソフトの料金も加えて、採用予算を組みます。求人を出す前に、雇いたい人の働く日数と時間、任せる仕事を書き出してください。

創業直後は社長が営業も納品も担っているため、忙しさだけで採用を決めがちです。ただ、納品を任せたいのか、事務作業を減らしたいのかで、必要な勤務時間も売上への効き方も変わります。

毎月の負担として、次の項目を並べます。

  • 額面の給与と、支給を予定する手当
  • 社会保険料・労働保険料の会社負担分
  • 通勤費、業務用ソフト、備品などの継続費用
  • 賞与を予定する場合の月割り額

給与から天引きする本人負担の保険料や税金は、額面給与に含まれています。会社負担分と混ぜると二重計上になるので、給与計算を依頼する税理士などに確認しましょう。加入条件や保険料の見積もりは、社会保険労務士にも確認します。

たとえば、給与25万円、会社負担の保険料を仮に4万5,000円、通勤費やソフト代などを2万5,000円と置くと、月の負担は32万円です。保険料は条件によって変わります。採用予算の出発点は、給与ではなく会社が毎月払う総額です。

2. 採用時の出費と教える時間も予算に入れる

入社前後には、月々の給与とは別の出費があります。広告を出した月、採用が決まった月、入社した月と、支払時期が分かれることもあるため、見積額の横に支払予定月を書きます。

最初の一人なら、机やパソコンの予備がない会社も多いはずです。手元の機器を使う場合も、業務に必要な性能や設定を確認してから予算から外してください。

  • 求人広告や採用サービスの利用料
  • パソコン、机、業務用端末などの購入費
  • 入社時の研修費や手続きの委託費

採用サービスの支払い時期は、掲載時か採用時に分かれます。ここでは一時費用の合計を、仮に30万円とします。会計上の費用になる時期とは分けて、資金の計算には支払う月の全額を載せます。経理処理は税理士に確認してください。

研修時間は見積もりが必要です。社長が引き継ぎに時間を使えば、その間は商談や納品が減る可能性があります。「入社初月から一人前の売上を作る」という計画にせず、最初に任せる作業と、社長の確認が必要な作業を分けます。

給与はすでに月32万円の中に含めたので、研修中の給与を別途足す必要はありません。一方、社長の仕事が減る影響は、売上見込みに反映させます。

3. 月32万円の負担には、売上がいくら要る?

売上の全額を給与に回せるわけではありません。商品を売れば仕入れ代がかかり、案件によって外注費や販売手数料も増えます。売上から、売上に伴って増える費用を引いた残りを「限界利益」と呼びます。

採用前に、直近の案件や商品の実績から、売上の何割が残るかを調べます。この割合が「限界利益率」です。社長の役員報酬や家賃など、売上に連動しない費用は、この段階では引きません。

  • 売上100万円に対し、仕入れ・外注費などが60万円なら、残りは40万円です。
  • 限界利益率は、40万円÷100万円=40%です。
  • 月32万円の追加負担を賄う売上は、32万円÷0.4=80万円です。

つまり、この仮定なら採用によって月80万円の売上を上乗せできれば、追加の月額負担と釣り合います。限界利益率が30%なら約107万円が必要です(32万円÷0.3)。必要な追加売上は「採用で増える月額負担÷限界利益率」で計算します。

使うのは、採用後に増やす仕事の利益率です。外注の多い案件を増やす予定なのに、利益率の高い商品の数字で計算すると、必要売上を少なく見積もってしまいます。

なお、月80万円は追加負担と釣り合う線です。一時費用30万円の回収や、会社に残す利益まで含めた目標には、別途上乗せが要ります。

4. 今の利益で賄う分と、増やす売上を分ける

既存の仕事から毎月余裕が出ているなら、32万円の全額を新しい売上で賄う必要はありません。反対に、今の時点で赤字なら、その不足も含めて計算します。

たとえば、既存事業の限界利益から役員報酬、家賃などの固定費を払った後、月10万円が継続して残っているとします。採用費用にその全額を充てる仮定なら、不足は月22万円です。限界利益率40%では、追加売上は月55万円となります。ただし、会社に残す利益は減るため、納税や借入返済に使う資金まで採用に回さないよう確認が必要です。

採用で売上が増える根拠も、仕事に落とし込みます。

  • 納品を任せるなら、追加で受けられる件数と単価を出します。
  • 事務を任せるなら、空いた時間で増やす商談数を決めます。
  • 営業を任せるなら、商談開始から初回受注までの期間を見込みます。

時間が空いても、売上が増えるかどうかは確認が必要です。受注候補や断っている注文があるかまで確認し、「忙しさが減る」と「売上が増える」を別々に見積もります。

5. 売上が立つまで、何か月持ちますか?

計算上の採算が合っても、給与の支払日に入金が間に合うとは限りません。採用後の月別計画には、売上に加えて、実際にお金が入る月を書きます。

仮に追加の入金が最初の3か月なく、既存事業からも資金を回さないなら、一時費用30万円と月32万円の3か月分で126万円を用意する計算です。これは試算用の条件であり、「126万円あれば採用してよい」という基準ではありません。

  • 入社から受注・納品まで、どれだけ時間がかかるか
  • 請求してから入金までの期間は、請求から入金までの平均期間を確認します
  • 追加売上が計画の半分でも、給与と既存の支払いを続けられるか

利益の計算と、支払日に残る預金の確認をセットにします。 資金が足りない見込みなら、求人を出す前に勤務時間や担当範囲を絞り、もう一度計算します。入社後に給与を下げる前提で予算を合わせるのは避けましょう。

6. 今日やること

求人を出す前に、次の数字を一枚にまとめてください。

  • 希望する月給に会社負担の保険料や交通費を足し、月額負担と一時費用を分けて書きます。
  • 増やしたい仕事の限界利益率を調べ、採用費用を賄う追加売上を計算します。
  • 入社から半年分の入金と支払いを並べ、売上が計画の半分の場合も預金が足りるか確認します。

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