経営の数字・約6分
あといくらで黒字?限界利益の基本計算
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
売上から仕入れや外注費を引くと、固定費を補える金額が分かります。一人社長向けに、黒字になる売上の目安と毎月の見直し方を説明します。
1. 売上のうち、固定費に回せる分を計算する
黒字までに必要な売上は、毎月かかる費用と、売上から仕入れなどを引いて残る割合で計算します。創業直後は注文が入るだけで安心しがちですが、売上がそのまま会社の利益になるわけではありません。
商品を売れば仕入代がかかり、制作を受ければ案件ごとの外注費が出ます。こうした売上に伴って増減する費用を「変動費」と呼びます。売上から変動費を差し引き、家賃や役員報酬などに回せる金額が「限界利益」です。
以下はすべて、計算方法をつかむための架空の金額です。ひと月の売上が60万円、変動費が24万円なら、限界利益は36万円になります。
- 売上高:60万円
- 変動費:24万円
- 限界利益:60万円−24万円=36万円
限界利益は、会社の最終的な利益ではありません。 残った36万円から毎月の固定費を払えるかどうかで、その月の採算が決まります。
2. 費用は「注文がなくてもかかるか」で分ける
まず、直近ひと月の会計データを開きます。まだ帳簿が整っていなければ、請求書やカード明細も使って、その月の売上に対応する費用を拾ってください。入金日や引落日だけで集めると、売上と費用の月がずれるため注意します。
分類に迷ったら「注文がゼロでも、この費用はかかるか」と考えます。毎月ほぼ一定額が発生する費用は、今回の計算では「固定費」に置きます。
- 変動費に置くもの:販売した商品の仕入原価、案件ごとの外注費、売上に応じた決済手数料
- 固定費に置くもの:役員報酬、会社負担の社会保険料、家賃、毎月定額のソフト利用料
- 分けて扱うもの:基本料金と従量料金があるサービス、月額契約に追加作業料がある外注費
外注費だから変動費、と勘定科目だけで決めないようにします。毎月定額で依頼する業務なら固定費として扱い、受注のたびに発注する仕事なら変動費にします。
商品の仕入れも、購入額を全部その月の変動費にすると、売れ残った分まで含まれます。販売分に対応する原価を使い、集計方法が分からなければ税理士に確認してください。最初から細かく分けきれなくても、迷った費用に印を付けておけば相談が進みます。
3. 固定費45万円なら、売上はいくら必要?
売上60万円から限界利益36万円が残る会社では、売上の60%を固定費の支払いや利益に回せます。この割合が「限界利益率」です。限界利益率の計算は、36万円÷60万円=60%となります。
仮に毎月の固定費が45万円なら、今の売上では9万円足りません。ただし、売上を9万円増やしても赤字は埋まりません。追加の売上にも仕入れや外注費がかかるためです。
黒字と赤字の境目になる売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率で求めます。この境目を「損益分岐点売上高」と呼びます。
- 限界利益率:36万円÷60万円=60%
- 損益分岐点売上高:45万円÷0.6=75万円
- 現在の売上から必要な上積み:75万円−60万円=15万円
売上75万円なら限界利益は45万円で、固定費と同額になります。利益はゼロなので、黒字にするには75万円を超える売上が必要です。月に6万円の利益を目指すなら、固定費に目標利益を足し、51万円÷0.6=85万円を売上の目安にします。
この計算は、売る商品や仕事の構成、費用の条件が変わらない前提です。売上を増やすために新しく人を雇う場合は、増える固定費も入れて計算し直します。
4. 「あと15万円」を受注の予定に置き換える
必要な上積みが分かったら、月末までに売上になる仕事へ落とし込みます。同じ採算の仕事が1件5万円なら、15万円は3件分です。商談中の案件について、受注の見込みだけでなく、納品や売上計上がいつになるかも確認します。
ただし、金額だけを追うと計算が崩れます。急ぎの案件で外注費が増えたり、値引きして受注したりすれば、手元に残る割合は下がります。先ほどの不足9万円を埋めるにも、限界利益率が30%の仕事なら30万円の追加売上が必要です。
- 追加案件の見積額から、その案件で増える費用を引く
- 残る金額を、固定費の不足額と比べる
- 納期と作業時間を見て、今月中に対応できるか確認する
一人社長なら、自分の作業時間も見落とせません。外注せずに利益を残せても、その仕事で予定が埋まり、別の受注を断ることがあります。限界利益の金額と作業時間を並べ、引き受ける順番を考えます。
月末が近く、対応できる仕事がなければ、翌月以降の定額契約や固定費を見直します。数字に合わせて無理な納期を約束する必要はありません。
5. 月初に更新し、預金残高とは分けて見る
最初の計算は、ひと月分の売上と費用がそろった時点で行います。その後は月初に前月分を更新し、当月の受注予定と比べる流れにすると続けやすくなります。月初に未確定の外注費があれば見込額を入れ、請求書が届いたら修正します。
創業直後は、月によって仕事の構成が変わります。先月の限界利益率を使い続けず、受注内容に合わせて目安を直してください。商品の販売と相談業務など、費用のかかり方が違う事業は、それぞれ計算してから限界利益を合算します。
- 月初:前月の売上・変動費・固定費を更新する
- 月半ば:当月の売上予定と、固定費を補える見込みを比べる
- 契約変更時:外注単価や家賃などの変更を反映する
採算上の黒字と、支払いに使える現金は別に確認します。 売上が立っても入金前なら支払いには使えません。また、借入元本の返済は費用に含まれませんが、現金は減ります。この計算で出した目標売上だけを根拠に、支払いの余裕まで判断しないようにします。
6. 今日やること
会計が締まるまで待たず、手元の資料で仮計算を始めます。分類に迷った箇所を残して、税理士との次の打ち合わせで確認してください。
- 直近ひと月の売上と費用を集め、費用を変動費と固定費に分ける
- 限界利益率を出し、固定費を割って黒字の境目となる売上高を計算する
- 当月の売上予定との差を出し、追加案件で残る金額と対応できる時間を確認する