税金と消費税・約6分
役員報酬を変えたら、天引き額はいつ直す?
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
役員報酬を変えても、税金と社会保険料の変更時期はそろいません。改定後の給与計算で確認する順番を整理します。
役員報酬を変えた月は、給与明細の支給額を直したあと、所得税・住民税・社会保険料を別々に確認します。すべての天引き額を同じ月から増減させると、手取り額や納付額にずれが出ます。
一人会社では、社長自身が給与ソフトを操作して振り込むこともあります。前月の明細をコピーしているなら、振込前に確認する時間を取ってください。
1. 最初に「何月支給分から変えるか」を決める
「今月から報酬を上げる」と決めても、当月払いか翌月払いかで、実際の支給日は異なる場合があります。決議した内容と給与の締日・支給日を照らし合わせ、最初に新しい金額を払う日を特定します。
役員報酬には、会社の経費として扱うための税務上の条件があります。期中の変更を含め、今回の改定をどう扱うかは税理士に確認してください。ここでは改定が決まった後の給与計算を進めます。
手元には次の資料をそろえます。
- 改定前後の報酬額と適用時期が分かる議事録など
- 前月の給与明細と給与台帳
- 住民税の特別徴収税額通知書
- 現在の社会保険料の根拠となる通知書
給与ソフトでは、役員の登録と報酬額の適用月を確認します。税理士に記帳だけを頼んでいる場合、給与計算まで契約に含まれるとは限りません。誰が計算し、誰が届出をするかも先にそろえます。
2. 所得税は、新しい報酬を払う回から計算し直す
毎月の給与から預かる所得税と復興特別所得税は、その回の給与額に応じて計算します。月払いなら、通常は支給額から社会保険料等を差し引いた金額を、その年の源泉徴収税額表の月額表に当てはめます(国税庁)。
所得税は、新しい報酬を支給する回から再計算します。 報酬が増えても、以前の源泉徴収額をそのまま使うのは避けてください。
確認するのは金額だけではありません。扶養控除等申告書を提出しているかによって、使う欄が変わります。主な勤務先に提出している場合は通常「甲欄」、提出していない場合は通常「乙欄」を使います。扶養親族等の数も、税額表のルールに従って判定します(国税庁)。
- 支給年に対応する税額表へ更新されているか
- 扶養控除等申告書の提出状況と甲欄・乙欄が合っているか
- 社会保険料等の控除額と扶養情報が正しいか
給与ソフトを使う場合も、最初の改定月は計算の前提を確認します。税額表が変わる年もあるため、前年の設定をそのまま使わないようにします。
なお、社会保険料が後の月に変われば、その月の所得税も計算し直されます。報酬改定時に一度確認して終わり、とはなりません。
3. 住民税は、報酬に合わせて動かさない
給与から天引きする住民税は、市区町村が前年の所得などを基に決め、会社へ通知します。通常は通知された年税額を、6月から翌年5月までの各月に分けて徴収します(総務省)。
そのため、報酬を下げた月から住民税も同じ割合で下げる、という計算はしません。住民税は、通知書に書かれた月額を使います。 途中で変更通知が届いた場合は、指定された月から金額を直します。
創業したばかりの社長なら、前職の給与に基づく住民税が残っていることもあります。現在の報酬が少なくても、天引き額がすぐには下がらない理由の一つです。
- 対象者と対象年度が合っているか
- その支給月に対応する税額を入力しているか
- 当初の通知より新しい変更通知が届いていないか
報酬を大幅に下げて住民税を引き切れなくなる場合は、給与計算を確定する前に市区町村の特別徴収担当へ連絡します。会社の判断で天引きを止めたり、本人払いへ切り替えたりせず、必要な手続きと徴収方法を確認してください。
4. 社会保険料は、改定後の3か月を確認する
健康保険料と厚生年金保険料は、その月の報酬に直接料率を掛ける計算ではありません。報酬を一定の幅で区分した「標準報酬月額」を基に計算します。
月額の役員報酬など、毎月決まって払う金額が変わると、標準報酬月額を途中で見直す対象になることがあります。この手続きを「随時改定」と呼び、対象となる場合は月額変更届を提出します。
原則として、変更後の報酬を初めて支給した月から3か月間の平均を確認し、従前と2等級以上の差があることなどの条件を満たすと、4か月目から標準報酬月額が変わります。支払基礎日数などの条件や例外もあるため、報酬の増減だけで判断しないでください(日本年金機構)。
- 新しい報酬を初めて支給した月を記録する
- その月から3か月間の報酬と支払基礎日数を確認する
- 条件に該当するか判定し、対象なら月額変更届を提出する
さらに、保険料が変わる月と、給与から引く月は分けて確認します。 たとえば4月支給分から報酬を改定し、随時改定の条件を満たせば、7月分から新しい標準報酬月額になります。前月分の保険料を翌月の給与で引く運用なら、天引き額の変更は8月支給分です(日本年金機構)。
健康保険組合に加入している場合などは、加入先の案内も確認します。判断や届出を任せるなら社会保険労務士へ、会社で行うなら年金事務所や加入先へ確認してください。
5. 振込前に、明細と変更予定月を照合する
給与明細ができたら、前月と並べます。最初の改定月は、支給額と所得税が変わり、住民税や社会保険料は据え置きになる場合があります。全部が動いていなくても、それだけで計算ミスとは限りません。
次の順で、変更の根拠まで確認します。
- 支給額を、決議した金額と適用月に照合する
- 社会保険料を、通知内容と会社の徴収時期に照合する
- 所得税と住民税を、それぞれの計算結果・通知額に照合する
- 差引支給額を、実際の振込予定額に照合する
確認後は、改定月と今後の変更予定月を給与台帳のメモ欄などに残します。社会保険料の変更予定があるなら、その給与計算日の前に予定を入れておきます。
振込後に誤りが見つかったときは、正しい明細との差額と、税金・保険料の納付状況を整理します。翌月に適当に相殺せず、所得税は税理士、住民税は市区町村、社会保険料は加入先などに修正方法を確認します。
6. 今日やること
次の給与を計算する前に、支給額の変更日と、各控除額の根拠を一枚にそろえます。
- 新しい役員報酬を最初に払う支給日を、議事録と給与設定で確認する
- 前月の明細、住民税の最新通知、社会保険料の通知を並べる
- 改定後3か月分を確認する日と、給与計算・届出の担当者を決める