経営の数字・約6分
値上がりした仕入れ、粗利はどれだけ減る?
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
新旧の仕入単価を並べ、商品別に粗利の減り方を確かめます。販売数と在庫も見て、価格や仕入れ方の対応を決めます。
仕入れの値上げ通知が届いたら、次の発注前に、よく売れる商品の粗利を計算してください。売価が同じでも、仕入単価が上がった分だけ手元に残る利益は減ります。創業直後は売上を増やすことに目が向きがちですが、販売数を増やして忙しくなっても、家賃や役員報酬を払う余裕が減ることがあります。
1. 通知が届いた日に、新旧の単価を並べる
まず、値上げ対象の商品を一覧にします。商品数が多ければ、直近の月によく売れたものから着手しましょう。記憶で埋めず、仕入れ先の通知と直近の請求書、販売記録を開いて転記します。
- 商品名と仕入れ先
- 現在の売価と、値引き後の実際の売価
- 変更前と変更後の仕入単価
- 新単価が適用される条件と日付
- 直近の月の販売数と、手元の在庫数
適用条件は、発注日なのか出荷日なのかで結果が変わります。通知に日付しか書かれていなければ、次に注文する前に仕入れ先へ確認してください。
箱単位で仕入れて個数単位で売る商品は、仕入単価も一個当たりに直します。送料が別請求なら、商品代だけの値上げと送料の変更を分けて記録します。新旧の数字で含める費用を変えると、値上がりの影響を正しく比べられません。
2. 一個の粗利と、売価に占める割合を出す
商品を一個売った代金から、その商品の原価を引いた利益を「粗利」と呼びます。今回は仕入れの値上がりの影響を見るため、商品ごとの原価に何を含めるかをそろえ、同じ条件で新旧を計算します。
比較表は税抜き同士、または税込み同士にそろえてください。自社の会計処理と合わせた扱いが分からなければ、税理士に確認してください。
- 変更前の粗利=実際の売価−変更前の一個当たり原価
- 変更後の粗利=実際の売価−変更後の一個当たり原価
- 一個当たりの粗利減少額=変更前の粗利−変更後の粗利
- 粗利率=粗利÷実際の売価×100
売価を据え置くと、一個当たりの原価の上昇額と同じだけ粗利が減ります。 定価で売れていない商品は、普段の値引き後の売価で計算しましょう。
仮の計算として、原価が売価の60%から70%に上がる場合を考えます。粗利率は40%から30%へ下がり、差は10ポイントです。一方、もとの粗利を基準にすると、利益は25%減っています。「粗利率が少し下がった」と受け止めるだけでは、影響を小さく見積もってしまいます。
なお、粗利からは家賃や役員報酬などを払います。粗利がプラスでも、会社全体が黒字になるとは限りません。
3. 月にいくら減るかで、対応の順番を決める
一個当たりの減少額が分かったら、直近の月の販売数を掛けます。これは、売価と販売数が変わらず、売った分がすべて新原価に置き換わった場合の影響です。
- 月の粗利減少額=一個当たりの粗利減少額×月の販売数
- 変更後の月の粗利=変更後の一個当たり粗利×月の販売数
- 対象商品全体の減少額=各商品の月の粗利減少額の合計
先に対応するのは、会社全体の粗利を多く減らす商品です。 値上げ率が高くても、ほとんど売れない商品なら月の影響は小さい場合があります。反対に、主力商品は一個当たりの小さな変化が積み重なります。
創業して間もなく販売実績が少ない会社は、確定注文分と、まだ注文のない見込み分を分けて計算してください。開店直後のキャンペーンで売れた数量を、そのまま平常月の販売数にすると判断を誤ります。根拠の薄い販売予測で、値上がり分を取り戻せると考えないようにします。
4. 安い在庫が残っていても、次の仕入れで判断する
値上げ前に仕入れた在庫が残っている間は、帳簿上の粗利に影響が出る時期と、新しい仕入代金を払う時期がずれることがあります。今月の試算表だけを見て「まだ大丈夫」と判断せず、次回発注分の単価で採算を確かめましょう。
- 現在の在庫が通常の販売ペースでいつ尽きるか
- 新単価の商品をいつ仕入れ、いつ支払うか
- すでに受けた注文を、どちらの在庫で納品するか
受注済みの商品を新単価で仕入れるなら、その注文の粗利も計算し直します。売価の変更について合意していない注文を、社内の判断だけで値上げしないようにしてください。
値上げ前のまとめ買いにも慎重な判断が必要です。仕入単価を抑えられても、売れるまで手元の現金が在庫に変わります。売れ残りや保管場所も考え、次の支払いに必要なお金を残せる数量に絞ります。帳簿上の在庫評価や売上原価への反映時期は、税理士に確認してください。
5. 売価・仕入れ条件・売り方を選び直す
粗利の減少額が大きい商品から、変更案を作ります。一個当たりの粗利額を維持したいなら、計算上は原価の上昇額を売価に足します。従来の粗利率を維持したい場合は、「新しい原価÷(1−従来の粗利率)」で必要な売価を求めます。粗利率は小数に直して計算してください。
ただし、その売価で注文が続くかは別に確かめる必要があります。
- 売価を変えるなら、変更日と対象の注文を決める
- 仕入れ条件を交渉するなら、単価・送料・発注数量を確認する
- 代替品を探すなら、品質・納期・返品条件を比べる
- 販売を縮小するなら、受注済み分と残る在庫の扱いを決める
検討した売価と原価で、月の粗利をもう一度計算します。販売数が今までどおりの場合と、減った場合を並べると、どこまで減ると従来の粗利を下回るかが見えてきます。
変更後の最初の月末には、実際の販売数と粗利を確認しましょう。送料や値引きも含め、想定より残らなかった理由を一つずつ調べます。
6. 今日やること
次の発注をする前に、主力商品から計算を埋め、最初に対応する一品を決めてください。
- 値上げ通知と請求書を開き、主力商品の新旧単価と適用条件を書き出す
- 一個当たりと月当たりの粗利減少額を計算し、影響の大きい順に並べる
- 最初に対応する商品の変更案を選び、仕入れ先への確認日と実施日を決める