経営の数字・約6分
返品とやり直し、毎月いくらかかっている?
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
返品や修正に使ったお金と時間を、月ごとに集計します。件数だけで判断せず、負担の大きい原因から改善します。
1. 返品した件数と、使ったお金・時間を残す
返品ややり直しの負担は、追加で払ったお金と、対応に使った時間を分けて記録すると見えてきます。返送料だけなら少額でも、説明の電話や再制作で半日使えば、次の仕事に回せる時間が減ります。
創業直後は、社長がその場で対応して終わらせがちです。忙しさが落ち着くころには、何が起きたか思い出せません。会計帳簿にも、通常の送料と返品の送料が混ざって残ります。
今月から、返品や修正の依頼を受けた日に一行だけ記録しましょう。表計算ソフトで十分です。最初から過去一年分を掘り起こす必要はありません。
- 受付日と注文番号、案件名
- 起きたことと、依頼を受けた理由
- 追加で払った費用と、返金・値引きの額
- 対応に使った時間と、完了した日
未完了の案件も載せます。費用が分からない欄は「未確定」とし、月末に確認します。空欄をゼロとして扱うと、対応中の負担が集計から消えてしまいます。
2. 一件の数え方を、先にそろえよう
同じ依頼でメールが何往復も続いたとき、連絡のたびに数えると件数が膨らみます。一つの注文・案件で発生した、一続きの対応を一件と数えるところから始めましょう。再発送や再修正が続いたら、その行に費用と時間を足します。
月をまたぐ案件は、受付月の行を更新します。月末時点では途中の集計だと分かるようにして、完了後に総額を見直してください。帳簿上の費用を計上する月とは目的が違うため、経営の振り返り用の表として分けておきます。
制作や受託サービスでは、契約に含めた通常の修正まで「やり直し」に混ぜないようにします。
- 商品の不良や納品物の誤りへの対応
- 顧客都合による返品や、合意後の変更
- 契約に含めている通常の修正
区分があると、品質の問題と、修正範囲の決め方の問題を分けて考えられます。理由が不明なら、推測で埋めず「確認中」と残します。お客さんの説明と社内で確認した事実が違う場合は、両方を短く記録してください。
3. 返金と追加費用は、別の欄で集計する
月末には「返金・値引き」「追加費用」「対応時間」をそれぞれ合計します。すべてを一つの損失額にまとめると、何を減らせばよいか判断しにくくなります。
返金は、受け取った売上を戻す動きです。再発送の送料や、外注先への修正代とは性質が違います。帳簿で売上を減らしたうえで、同じ返金額を追加費用にも入れると、負担を二重に数えてしまいます。実際の会計処理は税理士に確認してください。
追加費用には、その対応がなければ発生しなかった支出を集めます。
- 返送と再発送にかかった送料
- 交換品や作り直しに使った材料の原価
- 追加で依頼した外注費や、発生した決済手数料
- 廃棄や回収にかかった費用
商品の値札の金額を、そのまま交換品の費用に入れないでください。自社が負担した原価で見ます。戻った商品を再販売できるなら、商品原価の全額を失ったものとして扱わず、検品や再包装の負担も確認します。
社長や従業員の対応時間は、まず時間のまま合計すれば十分です。通常の給与に含まれる作業時間まで現金支出に足すと、実際に出ていったお金が分かりにくくなります。電話、原因確認、作り直し、再納品まで含めて記録すると、請求書に出ない負担も拾えます。
4. 件数が多い原因から直すべき?
改善する原因は、件数だけで選ばないようにします。短い連絡で済む返品が続く月もあれば、一件の作り直しで納期が押してしまう月もあります。原因ごとに件数・追加費用・対応時間を並べ、負担の偏りを見ます。
受注が増えれば、件数も増えやすくなります。規模の変化を確かめるため、件数と一緒に、対応が発生した注文・案件の割合も残しましょう。商品の出荷なら出荷件数、制作なら納品案件数を使い、比べる対象をそろえます。
- どの原因に追加費用が集中しているか
- どの原因で対応時間が長くなっているか
- 同じ原因が別の注文・案件でも起きているか
- 自社で変えられる工程があるか
「確認不足」だけでは、何を変えるか決まりません。「商品番号を見ずに梱包した」「完成前にサイズの合意を取っていなかった」まで具体的に書きます。誰が失敗したかで止めず、作業のどこで食い違ったかを探してください。
なお、安全に関わる不具合は月末の集計を待たずに対応します。費用が小さいという理由で後回しにはできません。
5. 来月は一つ変えて、同じ原因を追う
最初の集計ができたら、翌月に変える作業を一つ選びます。原因が複数あっても、一度に手順を増やすと、少人数の会社では続きません。負担が大きく、作業を変えれば減らせそうなものから着手します。
たとえば商品違いが続くなら、発送前に注文番号と商品番号を照合する手順を加えます。合意後の修正が多いなら、制作に入る前に仕様と修正範囲をメールで確認します。「気をつける」で終わらせず、次の案件から実行する動作に落としましょう。
- 誰が、どの時点で確認するかを決める
- 確認に使う欄やチェック項目を用意する
- 翌月末に、同じ原因の件数と負担を比べる
返品がゼロでも、注文自体が減っていたら改善したとは判断できません。対象となる注文・案件の数も見てください。逆に件数が変わらなくても、早く気づいて再発送や全面的な作り直しを減らせたなら、対応の負担は軽くなっています。
新しい確認作業にかかる時間も見ておきます。手間を増やした割に変化が乏しければ、確認する箇所やタイミングを見直します。
6. 今日やること
直近の返品かやり直しを一件選び、メールと支払い履歴を見ながら記録を始めてください。不明な費用は後で埋め、まず対応に使ったお金と時間を残します。
- 一件分の受付日、理由、追加費用、返金・値引き、対応時間を表に書く
- 通常の修正と、誤りへの対応を区別する欄を作る
- 月末の集計日を予定に入れ、翌月に直す原因を一つ選ぶ