税金と消費税・約6分
30万円未満の備品、特例を使う帳簿の書き方
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
備品を一括で経費にするには、勘定科目だけでなく償却方法の確認が必要です。入力項目と摘要、税理士に渡す記録を整理します。
1. 「消耗品費」に入れるだけでは終わりません
30万円未満の備品を買って一括で経費にしたいときは、会計ソフトへの入力と、税務申告で使う特例の確認をセットで進めます。領収書を取り込み、消耗品費を選んだだけでは、特例を使うための処理が済んだとは限りません。
通常は何年かに分けて経費にする備品を、条件を満たせば使い始めた年度にまとめて経費にする制度が「少額減価償却資産の特例」です。青色申告をしている一定の中小企業者等が対象で、資本金や従業員数などの条件もあります。
「30万円未満だから全額経費」と金額だけで判断しないでください。 取得日に適用される金額基準や適用期限、年度内の合計額の上限を税理士に確認します。制度改正の前後に購入した備品は、以前の説明をそのまま当てはめないようにします。
- 青色申告の承認と、会社側の適用条件を確認する
- 購入した備品の取得日と取得価額を確認する
- 今期に特例を使う予定の備品をまとめて確認する
税理士が未定なら、処理を確定する前に相談する備品として一覧に残します。経費にしたいという希望と、制度を使えるかどうかは分けておきます。
2. 入力前に、金額と使い始めた日をそろえる
請求書が届いたら、商品名、金額、購入日を拾います。続いて、実際に事業で使い始めた日を記録してください。特例の適用年度を判断する際は、支払った日だけでなく、事業に使い始めた時期も確認します。
たとえば決算前にパソコンを注文しても、届いたまま箱を開けず、翌期から使い始める場合があります。注文日やカードの引落日だけを見て、今期の経費として処理しないようにします。
金額も、本体価格だけを見れば済むとは限りません。送料や設置費を取得価額に含めるか、複数の商品を一組として判定するかで、特例の対象になるかが変わる場合があります。また、税込経理か税抜経理かによって判定に使う金額が異なります。
- 請求書の商品名と、付属品・送料・設置費の内訳を残す
- 納品日と、仕事で使い始めた日を記録する
- 税込・税抜のどちらで判定するかを税理士に聞く
セット購入の請求書を、判定額に収めるために自己判断で分割するのは避けます。内訳を渡し、どの単位で判断するかを確認してください。
3. 「一括償却資産」と「少額減価償却資産の特例」を選び分ける
会計ソフトで迷いやすいのが、勘定科目と償却方法です。勘定科目は帳簿で費用や資産を分類する項目、償却方法は取得価額をいつ経費にするかを扱う項目です。別々に設定するソフトもあります。
画面に「一括償却資産」があっても、「一度に全額を経費にする」という意味で選ばないでください。一括償却資産は、原則として3年で経費にする別の処理です。今回確認するのは「少額減価償却資産の特例」に対応する設定です。
表示名は製品やバージョンによって異なります。「少額資産」「即時償却」など類似の表示も、説明欄を読んで対象の制度を確かめます。
入力の流れには、消耗品費などの費用科目で処理する方法と、工具器具備品などで資産登録し、対応する償却処理で経費にする方法があります。税理士が帳簿を引き継ぎやすいよう、最初の一件で使う方法をそろえます。
- 勘定科目は、消耗品費などで処理するか資産計上するかを確認する
- 固定資産台帳では、特例に対応する償却方法と供用開始日を確認する
- 消費税区分は、取引内容と請求書に合わせて確認する
消費税区分を変えても、特例の選択にはなりません。また、購入時に全額を経費にしたうえで、固定資産台帳から同額の償却費を計上すると、二重に経費が入ります。登録後は仕訳も開き、同じ備品の費用が重なっていないかを見ます。
4. 摘要には品名、使用開始日、特例の扱いを残す
摘要には、後から帳簿を見た人が「何を買い、どの処理を予定したか」を追える情報を入れます。「備品代」「パソコン代」だけでは、買い替えや追加購入があったときに区別しにくくなります。
確認前なら、たとえば「業務用ノートPC・型番○○/管理番号PC-A/○月○日供用開始/少額減価償却資産の特例適用予定・税理士確認待ち」と書きます。確認が済んだら、予定のまま放置せず、実際に採用した処理に直します。
長い摘要を入力できないソフトでは、管理番号で別の備品一覧と結び付けます。取得価額や購入先が専用欄に記録されていれば、すべてを摘要に繰り返す必要はありません。
- 品名・型番は、請求書と照合できる形で記載する
- 管理番号は、固定資産台帳や備品一覧とそろえる
- 特例の扱いは、確認待ちか適用するかを区別する
摘要に「特例適用」と書くだけで、申告上の手続きが済むわけではありません。 摘要は、帳簿と申告をつなぐための記録として使います。
5. 月次で渡し、決算では申告明細まで確認する
購入した月の資料を渡す際に、請求書、使い始めた日、入力した仕訳をまとめて税理士へ送ります。「この備品は特例で全額を経費にしたい。入力方法も含めて確認してほしい」と添えると、確認してもらう箇所が伝わります。
年度の途中で追加購入したら、同じ一覧に追記します。一件ずつは対象でも、年度内の合計額によって扱いの確認が必要になるためです。
決算では、損金経理などの要件に加え、確定申告書に添付する適用額の明細(添付書類)も確認します。会計ソフトで費用になっていても、税務申告へ情報が引き継がれるかは別に点検します。
- 特例を使う備品一覧と帳簿の金額を照合する
- 固定資産台帳から費用を二重計上していないか確認する
- 申告に必要な明細と償却資産申告の扱いを税理士に確認する
法人税で全額を経費にした備品でも、償却資産申告では対象になり得ます。費用処理が済んだからと、備品一覧から削除しないでください。
6. 今日やること
まずは購入済みの備品を一件選び、請求書と入力画面を見比べます。その一件で処理方法を決めてから、ほかの備品にも広げます。
- 請求書を開き、取得価額の内訳と実際の使用開始日を備品一覧に記録する
- 会計ソフトの勘定科目・償却方法を確認し、摘要に品名と確認状況を残す
- 税理士へ仕訳と一覧を送り、取得日時点の適用条件と申告処理を確認する