届出と保険・約6分
一人会社の株主総会、何を記録して残す?
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
株主が自分一人でも、会社の決定は議事録に残します。決算承認などの決議事項と、書面で決めて保管する手順を整理します。
1. 株主が自分一人でも、決定を記録する
自分一人が株主の会社でも、株主総会で決める事項は議事録に残します。口座を作り、売上が立ち始めると、設立時の書類はしまったままになりがちです。最初の決算を迎える前に、定款と株主名簿を取り出してください。
ここで扱うのは、社長がすべての株式を持つ株式会社です。合同会社は決定の仕組みが異なります。また、働いているのは自分だけでも、家族などが出資して株主になっていれば、株主一人の会社には当たりません。
社長には、経営を担う取締役と、出資者である株主という二つの立場があります。日々の仕入れや営業の判断と、株主として行う決議を区別して記録します。
- 定款で、事業年度と株主総会に関する条文を確認します。
- 株主名簿で、株主の氏名と保有株式数を確認します。
- 登記事項証明書で、役員と取締役会の有無を確認します。
「一人で経営している」と「株主が一人」は別です。 設立を代行してもらい、手元に書類が見当たらなければ、作成を依頼した専門家から控えを受け取るところから始めます。
2. 決算承認と役員の変更を予定に入れる
創業1年目でまず予定しておくのは、決算後の定時株主総会です。一般的な小規模の株式会社では、貸借対照表や損益計算書など、その期の決算書類を承認します。税理士が決算書を作成しても、株主としての承認まで自動で済むわけではありません。
定時株主総会は毎事業年度の終了後、一定の時期に招集することとされています(会社法)。開催時期は定款を確認し、決算作業を始める際に税理士と日程を合わせます。修正前の決算書を承認してしまわないよう、最終確定版の書類をそろえてください。
決算以外にも、次のような場面では決議の要否を確認します。
- 役員報酬を決めるときは、定款に定めがあるかを確認します。
- 取締役の選任や重任をするときは、任期と登記の要否を確認します。
- 商号や事業目的を変えるときは、定款変更の内容を確認します。
- 配当をするときは、決議に加えて分配可能な金額を確認します。
これらをすべて決算後まで待つわけではありません。役員報酬を定期同額給与として税務上の損金に算入するには、原則として期首から3ヶ月以内に改定する必要があります。 期中の任意の変更は損金算入が認められない部分を生じさせるため、例外の要件や変更時期は税理士に確認してください。定款変更は変更を実施する前に手続きを整理します。
取締役会がない株式会社では株主総会が決められる範囲も広くなりますが、取引のたびに総会を開く運用にする必要はありません。迷う案件は定款を示し、「誰の決定が必要か」を司法書士などに確認します。
3. 会議を開かず、書面で決める方法もある
株主が一人なら、書面で同意して決議を成立させる方法が使えます。取締役が決議事項を提案し、その事項について議決権を行使できる株主全員が書面または電磁的記録で同意すると、株主総会の決議があったものと扱う仕組みです。これを決議の省略と呼びます(会社法)。
同じ本人が、取締役として提案し、株主として同意する形になります。一人だから手続きを飛ばすのではなく、どちらの立場で何を決めたかが分かる書類を残します。
- 提案書に、承認する内容と提案した取締役の氏名を記載します。
- 同意書に、提案内容に同意する旨と株主の氏名、同意日を記載します。
- 議事録に、決議があったものとみなされた事項と日付を記載します。
決算承認なら、対象となる事業年度と承認する決算書類を特定します。役員報酬なら、対象者、金額、適用する時期などを曖昧にしないようにします。「決算について承認した」「報酬を決めた」だけでは、後から内容を確認できません。
書面で同意する方法でも、議事録は作成します。 提案書と同意書だけで終わらせず、一組の記録としてそろえてください。事業報告などの報告事項も書面で済ませる場合は、決議の省略とは別の要件があるため、使用するひな型が対応しているかを確認します。
4. 議事録は決めた日に作り、本店で保管する
ひな型は、実際に総会を開催した場合と、決議を省略した場合で使い分けます。書面で決めたのに「本店会議室で開催し、議長が開会を宣した」と記載すると、実際の手続きと食い違います。
決議を省略した議事録では、決議事項、提案者の氏名、決議があったものとみなされた日、議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名などを記載します(会社法施行規則)。実際に開催した場合は、日時・場所、議事の経過の要領と結果、出席役員、議長がいる場合の氏名など、開催の事実に沿って記載します。
完成時は、本文の誤字だけでなく添付書類との一致も点検します。
- 会社名と事業年度が、定款や決算書と一致しているか確認します。
- 決議日と適用日が、実際に決めた経緯に合っているか確認します。
- 金額や対象者が、同意書と議事録で一致しているか確認します。
- 承認した決算書などが、一緒に保存されているか確認します。
押印については、一般の保管用と登記申請に添付する場合を分けて確認してください。登記に使う議事録は、決議内容や添付書類によって押印・印鑑証明書の扱いが変わるため、提出前に司法書士へ確認します。
株主総会議事録は、原則として総会の日から本店に10年間備え置きます。決議を省略した場合の同意書面・電磁的記録にも、決議があったものとみなされた日から10年間の本店での備置義務があります(会社法)。
紙で作った書類は原本をまとめ、閲覧用のPDFにも日付と決議名を付けると探しやすくなります。税理士や司法書士に作成を依頼しても、会社側で一式を受け取り、本店で確認できるようにしてください。
作り忘れに気づいたときは、過去の日付で開催や同意を取り繕わないでください。当時の決定を裏付ける資料を集め、記録の補完で足りるか、改めて決議が必要かを専門家に相談します。
5. 今日やること
最初は、定款を読む時間と、直近の決議を整理する時間を予定表に入れます。決算直前にまとめて思い出すより、決めた日に書類をそろえる方が負担を減らせます。
- 定款と株主名簿を取り出し、株主構成と定時株主総会の時期を確認します。
- 役員報酬など、設立後に決めた事項の議事録があるか確認します。
- 本店に保管場所を決め、提案書・同意書・議事録・添付資料を一組にまとめます。