届出と保険・約6分
会社のデータ、消える前に復元を試そう
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
保存済みでも、元に戻せるとは限りません。仕事が止まるデータから保存対象と頻度を決め、別の場所へ復元して確かめます。
1. 最初に守るのは、明日の仕事に使うデータ
会社のデータは、コピーを取ったところで終わらせず、仕事で使える状態に戻せるかまで試します。請求書の控えがあっても、請求先や未請求の案件が分からなければ、月末の請求は進みません。創業したばかりの会社ほど、社長のパソコンや一つのサービスに仕事が集まりがちです。
まず、普段使っているフォルダとサービスを開き、「明日これが消えたら、何が止まるか」を書き出してください。整理しきれていない過去の資料より、進行中の仕事を戻す準備から始めます。
- 請求と入金確認に使う、取引先一覧・請求書・未請求の案件表
- 納品を続けるための、作業中のファイル・素材・お客さんからの指示
- 約束の内容を確認する、契約書・見積書・受注メール
- 経理を引き継ぐための、帳簿データ・領収書・請求書の原本データ
税理士に資料を渡していても、自社のデータが全部保管されているとは限りません。会計ソフトの操作を任せている場合は、何を誰が保存しているかも確認します。
2. 保存の頻度は、やり直せる仕事量で決める
一週間前の状態に戻せても、その後の注文が消えていたら、メールや手元のメモから拾い直すことになります。保存の間隔は「どれくらい前まで戻っても、仕事を立て直せるか」で決めます。
消えて困る期間より、保存の間隔を短くするのが判断の軸です。毎日更新する受注表を月末にしか保存していないなら、間隔が空きすぎています。一方、変更のない会社案内を毎日手作業でコピーする必要はありません。
- 日々更新する受注表や作業ファイルは、その日の変更を残す設定にする
- 契約書や納品データは、締結・納品の区切りでも保存する
- 会社案内や社内のひな形は、変更したときに保存する
手作業だけにすると、忙しい日に後回しになります。自動保存を使えるものから設定し、対象フォルダと実行結果を確認してください。「毎日動く設定」と「昨日の保存が成功した」は別の確認です。
新しいサービスを使い始めたときや、初めて従業員を迎えたときには、保存対象を見直します。担当者の端末だけにあるファイルを残さないためです。
3. 同期とは別に、過去へ戻れるコピーを残す
クラウドに置いているだけでは、誤って削除したデータを戻せない場合があります。パソコンとクラウドの内容をそろえる同期では、削除や誤った上書きも反映されるためです。
使っているサービスの管理画面で、過去のバージョンや削除済みファイルを戻せる期間を調べます。利用プランによって範囲が違う場合もあります。気づくのが遅れると戻せないこともあるので、普段の保存先とは別に、復元用のコピーを残します。
- 外付けの保存機器を使うなら、保存後は接続を外し、施錠できる場所で管理する
- 別のクラウドを使うなら、元の保存先とアクセス権限を分けて管理する
- 会計や顧客管理のサービスは、取り出せるデータと取り出せないデータを確認する
同じパソコンの中にフォルダを増やしても、端末の故障への備えにはなりません。また、つなぎっぱなしの保存機器は、データを暗号化して使えなくするランサムウェアの被害を一緒に受けるおそれがあります。
顧客情報を含むコピーは、会社が管理する保存先へ置いてください。保存先を増やす分、誰が開けるかも決めます。ログインできなくなった場合に備え、多要素認証の復旧手段も、サービス内だけに置かず安全に保管します。
4. 本番のファイルを触らず、一件戻してみる
最初の復元テストは、使う頻度が高いファイル一件で構いません。普段のフォルダから開くのではなく、復元用に残したコピーから取り出します。元のファイルを消して試す必要はありません。
パソコンに「復元テスト」用の空のフォルダを作り、そこへ戻します。可能なら、会社が管理する別の端末でも開いてください。元の端末にしかないソフトや設定に頼っていないかを確かめられます。
- 保存日時を見て、戻したい時点のコピーを選ぶ
- テスト用フォルダに復元し、普段使うソフトで開く
- 最後に更新した行やページを見て、内容が戻っているか照合する
- 所要時間と、途中で必要になった操作を記録する
ファイル名が見えるだけでは、確認は終わりません。表計算なら数式や別ファイルへの参照、制作物なら画像や関連素材も確認します。開けても請求額が計算されないなら、そのまま仕事には使えないからです。
クラウドサービスから取り出した一覧データにも注意が要ります。顧客一覧を保存できても、添付ファイルや過去のやり取りまで戻せるとは限りません。再取り込みの方法が不明なら提供元に確認し、会計データは税理士と相談してから試します。
5. 戻せなかった理由を、次の保存に反映する
復元に失敗したら、何が足りなかったかを一つずつ直します。保存対象の漏れなのか、コピーが古かったのか、権限やソフトの問題なのかで、対処が変わります。
復元できた日と、戻せた範囲を記録すると、次回の確認が楽になります。「バックアップ済み」という一言より、請求書は開けたが添付資料は不足していた、という記録のほうが役立ちます。
- 試した日、使った保存先、復元したファイル名
- 戻せた時点、かかった時間、足りなかったデータ
- 修正する設定、担当者、次に試す日
一人会社では、担当者は自分で構いません。月末の経理確認など、すでにある予定に復元テストを組み込みます。保存方法やパソコンを変えた直後にも試してください。
端末の紛失や不正アクセスが起きた場合は、復元前に被害の広がりを止める対応が必要です。感染が疑われる端末へ保存機器をつなぐのは避け、保守窓口などに相談します。
6. 今日やること
まずは、次の請求や納品で使うファイルを選んでください。全社分の整理を終える前でも、一件の復元なら着手できます。
- 消えると仕事が止まるデータを書き出し、保存場所と保存の頻度を決める
- 普段の保存先とは別にコピーを残し、保存日時を確認する
- 一件をテスト用フォルダへ戻して中身を照合し、結果と次の確認日を残す