税金と消費税・約6分
個人への外注費、源泉所得税は引く?
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
個人への外注費は、仕事の内容によって源泉徴収が必要です。発注前の確認から税額計算、振込、納付までの順番を整理します。
1. 個人への支払いは、仕事内容で判断します
個人のデザイナーやライターに会社から報酬を払うときは、源泉所得税を差し引く対象か、振込前に確認します。外注費という勘定科目や、請求書に書かれた「業務委託料」だけでは判断できません。
報酬の一部を会社が預かり、本人に代わって税務署へ納める仕組みが源泉徴収です。会社が負担する税金ではありませんが、対象の報酬を払う会社には、差し引いて納める義務があります。一人会社でも同じです。
最初に、契約相手と仕事内容を次の順で確かめます。
- 契約・請求の相手が、個人か法人かを確認します。
- 個人なら、依頼した仕事が源泉徴収の対象かを確認します。
- 対象なら、支払額から税額を計算し、振込額を決めます。
屋号が付いていても、個人事業主の場合があります。請求書に屋号だけが載っていたら、契約相手の正式名称と法人かどうかを聞きましょう。国内法人への通常の原稿料やデザイン料は、原則としてこの源泉徴収の対象外です。
以下は、日本に住む個人への支払いを想定しています。海外在住の相手は扱いが変わるため、発注前に税理士へ確認してください。
2. 原稿とデザインは対象、制作一式は内訳を確認
源泉徴収の要否は、相手の肩書きよりも、実際に頼んだ仕事で決まります。 個人に払う原稿料、挿絵料、デザイン料などは対象です。一方、個人への外注費がすべて対象になるわけではありません(国税庁)。
創業直後によくある依頼は、次のように分けて確認します。
- 記事の執筆や原稿作成は、原稿料として対象になります。
- ロゴやチラシのデザインは、デザイン料として対象になります。
- 翻訳や講演の報酬も、対象になります。
- データ入力やプログラミングだけの報酬は、通常は対象外です。
迷いやすいのが「ホームページ制作一式」です。画面のデザイン、文章の執筆、プログラムの実装が一つの金額にまとまっていると、どの部分が対象か見えません。契約書や見積書で、仕事と金額の内訳を確認します。
名前を「制作費」に変えても、実態がデザインなら対象から外れません。逆に、デザイナーに頼んだ作業でも、すべてがデザイン料に当たるとは限りません。
内訳が不明なら、支払い直前まで放置せず、見積もりを受け取った段階で相手に確認します。複数の仕事が一体になって分けられない場合は、契約書と成果物の内容を税理士に見てもらいましょう。社内の判断だけで対象額を小さく分けるのは避けます。
3. 発注時に「報酬額」と「振込額」を分けて伝える
報酬の合意時には、消費税を含むかに加え、源泉所得税を差し引いて振り込むことも伝えます。「10万円でお願いします」だけでは、相手が手取り10万円だと誤解する可能性があります。
依頼メールや発注書には、次の内容を残します。
- 依頼する仕事と、その報酬額
- 消費税額と、税込みの支払総額
- 源泉所得税を差し引く旨と、支払予定日
相手の請求書に源泉所得税の記載がなくても、会社側の源泉徴収義務はなくなりません。受け取った請求書をそのまま振込予約する前に、仕事内容と計算を照合してください。
手取り額を先に約束した場合は、会社が払う報酬総額を逆算する必要があり、想定より費用が増えることがあります。初回発注では、報酬額を基準に合意しておくと行き違いを減らせます。
4. 税額を計算してから、振込予約をする
原稿料やデザイン料では、通常、1回に支払う対象額が100万円以下なら10.21%を掛けます。100万円を超える場合は、超えた部分に20.42%を掛け、10万2,100円を加えます。計算で生じる1円未満の端数は切り捨てます(国税庁)。
これは復興特別所得税を含む率です。個人への報酬でも、仕事によって計算方法が異なるため、ほかの業務へそのまま当てはめないでください。
消費税が請求書で明確に区分されているかによって、計算の基になる額が変わります。 原則は消費税込みの金額ですが、報酬と消費税額が明確に分かれていれば、報酬だけを対象として差し支えありません(国税庁)。
例えば「デザイン料10万円、消費税1万円」と明記された請求書で、税抜報酬を基に計算する場合は、次の順になります。
- 源泉徴収の対象額を10万円と確認します。
- 10万円に10.21%を掛け、税額を1万210円と計算します。
- 請求総額11万円から差し引き、9万9,790円を振り込みます。
「税込11万円」とだけ書かれていて消費税の区分が不明な場合、原則として11万円を基に計算します。インボイス登録の有無と、源泉徴収が必要かどうかは別の判断です。
振込時には、相手にも報酬総額、差し引いた税額、振込額を伝えます。会計処理でも外注費を振込額だけで記録せず、預かった税額を分けて残しましょう。
5. 振込が終わったら、翌月の納付まで登録する
差し引いた税金は、原則として支払った月の翌月10日までに納めます。期限が土日祝日などに当たるときは、原則として翌開庁日になります(国税庁)。
給与の源泉所得税を半年ごとに納めている会社でも、原稿料やデザイン料は通常、翌月納付です。 納期の特例が適用される報酬の範囲は限られています。給与と一緒の予定にすると、納付漏れにつながります。
初回の支払いまでに、担当と方法を決めておきます。
- 誰が税額を確認し、振込額を確定するか
- 誰が納付手続きを行い、いつまでに資料を渡すか
- 請求書、計算内容、振込記録、納付記録をどこに保存するか
税理士に依頼していても、納付手続きまで契約に含まれるとは限りません。未定なら、所轄税務署で納付方法を確認します。振込予約と同時に納付予定もカレンダーへ入れると、翌月に持ち越した作業を見失いにくくなります。
すでに差し引かず全額を払った場合は、請求書と支払日、金額をまとめ、税理士に早めに相談してください。会社側の納付と相手からの回収を整理する必要があるため、次回の報酬から無断で引くのは避けます。
6. 今日やること
次に支払う個人外注の請求書を一枚開き、仕事の内容から確認してください。税額と納付担当が決まってから、振込予約を進めます。
- 契約相手が個人か法人かを確かめ、依頼内容を見積書と照合します。
- 対象業務と消費税の区分を確認し、迷う点を税理士に送ります。
- 振込額を計算し、翌月の納付期限と担当者を予定に登録します。