税金と消費税・約6分
売上から源泉所得税を引かれたら?
公開・あさひ国際会計株式会社

先に結論
法人の売上から源泉所得税が引かれていたら、契約と請求の名義を確認します。先方と税理士に照会し、差額の精算と帳簿の処理をそろえましょう。
売上の入金から源泉所得税が引かれていたら、まず、その仕事を受けたのが会社か社長個人かを確認してください。国内の法人が受け取る通常の原稿料やデザイン料などは、原則として報酬・料金の源泉徴収の対象になりません。ただし、法人でも源泉徴収される収入はあるため、差額を見ただけで先方の間違いとは決めつけないでください(国税庁)。
設立したばかりの会社では、個人時代の取引先情報が残っている場合があります。請求書は会社名でも、先方の支払処理が個人扱いのままという行き違いです。入金を見つけた日に資料を集め、先方への確認と税理士への相談を進めましょう。
1. 差額の理由を支払明細で確かめる
請求額より入金が少なくても、原因が源泉所得税とは限りません。振込手数料、販売サービスの手数料、前回分との相殺などでも差額が出ます。通帳の入金額から税額を逆算する前に、先方の支払明細と請求書を並べてください。
明細がなければ、請求書番号と入金日を伝え、差額の内訳を問い合わせます。「振込額が違います」だけよりも、確認してほしい請求書番号や入金日を伝えたほうが返事をもらいやすくなります。
- 請求書の金額と、対応する入金額を照合します。
- 支払明細の源泉所得税、手数料、相殺の欄を確認します。
- 複数の請求がまとめて入金されていないか調べます。
確認が済むまでは、差額を値引きや手数料として処理しないでください。会計ソフトが銀行の入金額をそのまま売上にしている場合も、いったん確認対象にします。引かれた理由が分からないまま、売上を入金額に合わせて減らさないことが出発点です。
2. 請求書だけでなく、契約した相手を見る
次に、その売上が会社に帰属するものかを確認します。法人名の請求書を発行したという一事だけでは判断できません。契約書や発注メール、仕事を引き受けた時期も合わせて見ます。
会社設立後に法人として契約し、法人が納品した仕事なら、その流れを先方へ示します。一方、個人事業のときに受注した仕事を設立後に納品した場合は、契約を会社へ引き継いだかなどの確認が必要です。振込先を法人口座に変えただけで、過去の仕事まで会社の売上になるわけではありません。
手元に次の資料をそろえてください。
- 契約書や発注書に記載された受注者の名前
- 見積書と請求書の発行名義
- 受注日、会社設立日、納品日が分かる記録
- 個人から法人への取引切替を伝えたメール
契約書がなくても、発注を受けたメールや受注時のやり取りは判断材料になります。資料の名義が食い違うときは、先方への訂正依頼を急ぐ前に税理士に確認してください。過去の書類を独断で会社名へ書き換えると、取引の経緯が分かりにくくなります。
3. 法人でも、収入の種類で扱いが違う
国内法人への通常の業務委託報酬と、社長個人への報酬では、源泉徴収の扱いが異なります。先方が「この業務は源泉徴収する決まりです」と説明していても、個人向けの処理を前提にしていないか確認が必要です。
一方で、法人が受け取る預金利息や配当などには、源泉徴収の対象となるものがあります。また、内国法人に支払う報酬・料金でも、馬主である法人が受け取る競馬の賞金は対象です(国税庁)。「法人だから全部対象外」とはせず、誰に対する何の支払いかを確認して判断します。
税理士には、単に「引かれた税金を戻せますか」と尋ねるより、資料とともに次を聞くと話が進みます。
- この取引は会社と個人のどちらの売上になるか
- この支払いに源泉徴収が必要か
- 不要な控除なら、差額をどう精算して記帳するか
海外の取引先から外国の税金を引かれた場合は、日本の源泉徴収とは別の確認が必要です。支払元の国と控除の明細も渡してください。
4. 先方には、根拠と精算方法を照会する
法人の売上だと資料で確認できたら、先方の経理担当者へ連絡します。最初から「誤りなので返金してください」と断定せず、相手の登録情報と処理の根拠を聞きます。
例えば、「請求書〇〇の入金について、源泉所得税として差額が控除されていました。当該取引は当社名義で受注しています。支払先が法人として登録されているか、源泉徴収の対象とされた理由と併せてご確認ください」と伝えます。契約書の該当部分や請求書を添えると、照合しやすくなります。
誤って引いたと分かった後は、差額の支払い方法と期限を決めてください。「次回で調整します」という返事だけでは、次の注文がないまま残ってしまいます。
- 差額を別途振り込むか、次回の支払いに加算するか
- いつ、どの請求分として精算するか
- 訂正した支払明細を発行してもらえるか
源泉所得税を先方がすでに税務署へ納付している場合、誤納額の還付請求などは原則として納付した側が行います(国税庁)。その手続きと、自社への差額の支払予定を分けて確認してください。自社で税務署に請求すれば済むとは考えず、処理がかみ合わなければ双方の税理士に確認します。
5. 差額が戻るまで、帳簿と記録を残す
経理上の処理は、正しく源泉徴収されたのか、誤って控除されたのかで変わります。誤控除なのに、会社が納めた税金として処理してしまうと、先方から受け取るべき差額を見失うおそれがあります。法人税の申告でそのまま差し引けるとも限りません。
税理士には、請求書、入金記録、支払明細に加え、先方の回答をまとめて渡します。月次の記帳を自分で進めているなら、差額の科目や未精算分の扱いを確認してください。決算が近い場合は、いつの入金かだけでなく、精算が済んでいるかも伝えます。
- 対象の請求書番号、控除額、先方の回答を記録します。
- 精算予定日を予定表に入れ、当日に入金を確認します。
- 翌回の支払明細でも同じ控除がないか確かめます。
取引先情報が原因なら、法人名への変更が支払システムまで反映されたかを確認しておきます。差額の回収と登録の修正を両方済ませると、毎月同じ照会を繰り返さずに済みます。
6. 今日やること
入金差額を見つけた請求を一件選び、契約から支払いまでの資料をそろえてください。判断に迷う点を短く書き添えれば、税理士にも相談しやすくなります。
- 請求書と支払明細を並べ、何の名目で引かれたか確かめます。
- 契約名義と受注時期を確認し、資料を税理士へ送ります。
- 先方へ控除の理由を照会し、誤りなら精算日と登録修正を確認します。